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「それじゃぁマルチタスクの話なんだけど」

「それじゃぁマルチタスクの話なんだけど」

「マルチタスクって作業効率下がるんですよね?」

「そうよ」

「最近いろんなとこで言われてますもんねぇ。

 人間本来マルチタスクなんてできないんですよ」


「そうよ。例えばなんだけどね。

 作業には時間と質があるわけね。

 時間は短ければ短いほど良くて、

 質は高ければ高いほどいい。

 これを仮に数値化してスコアにした場合に、

 同時に2個進めた場合と、1個ずつやった場合、

 どう足掻いても必ず1個ずつやった方が上ということね」

「マルチタスクをやると作業時間が遅くなり、

 しかも質も低下する。

 これが特に簿記みたいな絶対間違っちゃダメな事務だと

 どうしようもないことになりますね」

「100点以外のスコアが認められない事務の場合、

 繰り返しチェックすることで100点にするんだけど、

 その場合より長い時間がかかる上に、

 むしろ最初から集中して作業すべきだったと後悔するのね」

「そうなりますよねぇ。

 やっぱマルチタスクとか幻想なんですよ!」


「と、思うじゃない?」

「違うんですか?」


「ここまでの話は本当ね。

 ただ、考えてみて欲しいのよ。

 同じ作業でも人によって短い時間でやる人、

 より高いスコアで終える人がいるわよね?」

「まぁそんなの当たり前ですね」


「また作業と一口で言っても

 コンベアで流れてくる回路をハンダ付けする業務と

 コンベアに流れてくるお刺身にタンポポ乗せる業務だと

 後者の方がより簡単、つまり、

 求められてるスコアが違うでしょ?」

「それも当たり前ですね」

「あとはもうわかるでしょ?」


「なるほど。マルチタスクでこなしていい作業はあって、

 それは人によってどこまでマルチタスクで

 こなしていいかが変わってくる、と」

「その通り。つまりマルチタスク技能とは

 マルチタスクをする方法や

 マルチタスクの効率を上げる技能ではなく、

 マルチタスクでこなしていい作業かを判断する技能なのよ」

「ほえ~」


「◯◯は××はダメ。

 そんなロジックは世界に溢れてるわ。

 そこで『じゃぁダメかぁ』ではなく、

 『××を△△にすればいいのでは?』と気付くのが重要ってこと」

「言われてみれば当たり前ですねぇ」


「それでさ、いろんなとこで酷評されてる

 映画の倍速視聴なんだけど」

「Z世代がそういうことやってるらしいと聞いた

 上のおじさんおばさんがマジギレしてましたね。

 間が重要なんだよ間が、って」


「じゃぁそのおじさんおばさんにデビルマン見せてきて」

「拷問かな?」

「シベリア超特急もつけていいわ」

「拷問でした」


「どうしてZ世代が倍速視聴した映画を

 2回目3回目で等倍視聴する可能性に気付かないのかしら」

「それなんですよね。

 まぁ実際、間の見事さを判断できず、

 傑作を駄作と判断し間違える可能性はあるんですけど、

 真の傑作なら倍速でも傑作だってわかりますよね」


「現代は電子化も相まって

 手に取れる情報の量が爆発的に増えてしまった。

 ここで重要なのは、

 多くの情報を取り込むことじゃない。

 情報の取捨選択をすることなのよ」

「あっ! そういうことですか!

 だから速読とマルチタスクなんですか!」


「そうなのよ。

 速読とマルチタスクは、

 効率上昇・速度上昇の技じゃない。

 高速確認の手段なのよ。

 これらで価値があると判断したものだけ、

 じっくり真剣にインプットすればいいの。

 流し見してたけど、今なんか私がずっと困ってた

 プログラム上の問題を解決する

 ソースコードみたいなのが書かれてなかった? 的な」

「そういう話でしたかぁ」


「現代人は間違いなく幸せなのよ。

 そして、現代人の方が遥か優秀。

 当然よね、教科書の質も、

 教科書の量も、過去より遥かに上なんだもん」

「ちゃらちゃらしてる適当な子でも、

 Excelを当たり前に使いますもんねぇ」

「それを見て『最近の若いもんは』って言うの、

 ただの僻みだって気付いてないのかしら」

「気付いたら負けなんでしょうね。

 もう勝負ついてるのに、

 必死に目をそらしてるんです」


「ただ、優秀な過去の人が今の時代に生まれていたら、

 今より遥かに優秀に育ったことは間違いない。

 そして過去の人達が厳しい環境でどうにか少しでも

 うまくやる方法を身に付けていたことも間違いない。

 そして、今の人たちに今に慣れすぎて、

 幸せな環境を幸せと気付いていないばかりか、

 もっと楽したいと堕落し続けていることも間違いないのよ」

「結局はいかに『気付く』かなんですか」

「そうねぇ。だから私、天才じゃないのよ。

 当たり前なことを再確認して気付き直しただけだから。

 本当に当たり前なことしかしてないのよ」

「ほえぇ……」

「はい、終わり。終わってみれば当たり前すぎて

 つまらない話だったでしょう?」


「うーん……でもお姉様、1ついいですか?」

「よくてよ」

「pixiv大百科とアニオタwikiを見てるのが

 ただの趣味だってのはまぁいいんです。

 でもそのロジックで言うなら、

 WikiとCiNiiだけじゃなくて、

 日経デジタルとか東洋経済オンラインとか

 そのあたりも参照した方がよくないですか?」

「不要よ」

「どうして?」


「ぬるい現代社会を適当に生きるためのハックなんて知りたくない。

 私はプラトンとマキャベリとマルクスを無限にしゃぶるから」

「イデア極まってるなぁ」

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