「今日は東洋医学の話をしてあげるわ」
「こないだ凄く不思議な体験をしたんですよ」
「へぇ。聞かせなさい」
「中野で同人と中古衣装漁った帰りに、
東洋整体マッサージの看板が目に入ったんです」
「いくら?」
「50分2980円」
「お安い」
「それでその店入って、施術室に案内されて、
施術用の服に着替えるんですが」
「エロいこと始まるやつ?」
「始まりません。
そしたら受付とは違うお婆さんが入ってきて、
私に小さいスケッチブックを見せてくるんです」
「知っているがお前の態度が気に入らない」
「そうじゃなくて!」
「そこには『私は耳が聞こえません』って書いてあったんです」
「あぁ、なるほどね。
良かったじゃない。その時点でもう当たり引いたわよ」
「あ、お姉様はそこで気付けるんですね」
「そりゃそうよ。東洋整体なんて、
手の感覚にどれだけステを振れるかでしょ。
聴覚をゼロにできるなら、
振れるリソースが増えて当然。
そもそもそういう何かしらの盲人がつける職業として
整体なんて技術が発展したところもある。
日本だと恐山のイタコみたいなもので、
お隣のモンゴルではシャーマンになるわ」
「お姉様、そういうオカルトは……」
「そうだった。私もうオカルトには触らない」
「で、まぁご想像どおり物凄く上手だったんですが、
問題は帰った後だったんですよ。
なんか突然全身が痛くなって、
まるで風邪の時みたいな筋肉痛が襲ってきたんです」
「あぁ、こないだの。
でもそれ1日でケロりとしてなかった?」
「そうなんですよ。
一晩寝たら回復して、以降体が絶好調なんです。
ほんと不思議な体験でした」
「不思議でもなんでもないわよ。
ただ一流の東洋医学の業師と出会えただけ。
そうね、良い機会だから。
今日は東洋医学の話をしてあげるわ」
「えー? 東洋医学ってあれでしょ?
気功とかチャクラとか。
お姉様、それオカルトだからやめた方がいいですよ」
「典型的な勘違いね。
東洋医学はオカルトではないわ。
むしろ、数千年の人体実験のノウハウを口伝した結果の、
超実践的医学技術なの」
「まじでぇ?」
「まじまじ」
「でも始皇帝って確か水銀飲んでましたよね?」
「辰砂ね。賢者の石とも言われ、
不老不死の霊薬として信じられていた。
だから兵馬俑には水銀の海があったのよね」
「でも水銀って猛毒じゃないですか。
水俣病の原因の」
「そうよ。だからこれに関しては単純な勘違い。
でも考えてみて。
そもそもの話として、
あなた地中から発掘された怪しい金属、
舐めようって気になる?」
「ならねぇですね」
「でも古代の東洋人はなったのよ。
こうして植物や鉱物や獣の骨や角。
なんでもとりあえず飲んでみた結果、
漢方という技術体系が完成していくの。
漢方とは、好奇心のバグと人体実験の歴史なのよ」
「うわぁ……」
「でも実際漢方薬ってよくわかんないけど何故か効果があって、
化学物質の合成で作った薬品と違って
アレルギー反応が出る可能性も極めて低くて、
コ●ナにだって効くじゃない」
「お姉様のリアルの意志同位体、
今オミクロンで寝込んでますけど、
葛根湯飲むと楽になってますもんね」
「そうね。眠れないからエロ小説書いて更新してたんだけど、
眠れないでも無理矢理寝た方が楽になるって気付いたそうよ」
「ははん? もしかしてバカですね?」
「今ちょっと楽になったからって
pixiv版のエロ小説更新してこんなの書いてるからバカね」
「でも今の医学って基本的にほぼ100%西洋医学ですよね?」
「そうね。これは西洋医学が化学の手法を応用したから。
つまり、病気の原因を化学式と数式で導き出して、
その足りないもの、解決策を同じ化学式と数式で導いてから
式に合うように薬を作るというやり方。
ブラックホール見つけた方法と同じなのよ」
「なるほど。実際今の化学はこの手法で
ありえない速度で発展してますよね」
「ただ、こうして発展する前の西洋医学は、
ギリシャ哲学と西洋宗教に支配されていて、
イデアだとか神だとか精霊だとか、
そういうオカルトの塊で構築されていて、
治療とは名ばかりの介錯が平然と行われていたわ。
とりあえず血を抜かれるとか、
虫歯の治療と称して顎の骨を砕かれるとか」
「あぁ、昔は床屋で血を抜いてたんですよね?
それがあのサインポールの」
「そうそう。よく知ってるわね。
ちなみに、当然だけど効果は1ミリもないわ」
「でしょうね」
「と、この段階で東洋医学にありえない差を広げられていたんだけど」
「人口の少なさとヨーロッパ諸国がまとまってないせいですねぇ。
権威的な人体実験が行えないし、結果も共有できない。
その上この手の知識を持ってたおばあちゃんとかが、
魔女狩りでバシバシ殺されていくわけで」
「そういうこと。ただ、ここでみなさんご存知、
産業革命とアヘン戦争が始まるのよ」
「みんな大好きブリカス無双」
「ここで西洋人は、東洋人は遅れた文明で
我々が教育しなければならないという
文明化の使命に至るわけね」
「素晴らしすぎて反吐が出そうなお考えです」
「そこでやつら、よくわかんない草とか石とか舐めてんのよ。
どう思う?」
「未開人のアホ」
「そういうこと。これによって、
数千年の漢方の歴史は一瞬で否定され、
東洋医学全体がオカルトというレッテルを張られたわけ」
「なるほどなぁ。
でも、西洋医学が間違いってわけじゃないですよね?」
「当然よ。客観的に見て、今はもう西洋医学の方が優秀だし、
東洋医学の発展方法を考えるに、この先の逆転はもうありえない。
また、説明ができず一見スピリチュアルに見えるからこそ、
それを利用した詐欺やトリックが横行しているのも大きな問題。
でも、まだ現代でも西洋医学の未解決問題は数多く、
その一部に東洋医学が回答を持ってることは事実なの。
何故効果があるのかよくわからない漢方薬や、
あなたが経験したような中国整体。
それを『オカルト』と言ってしまうのは、
あなたの思想形成に当時の『文明化の使命』が
まだ色濃く残っている証拠だということ」
「やっぱ人間って救えないんですねぇ」
「でも結局、どうして東洋医学に効果があるのかって、
わかってないんですよね?」
「わかってないわ。でも効果があるというデータだけある」
「もしかしたら致命的な副作用が隠れてるのでは?」
「その可能性は否定できない」
「そう考えるとやっぱ怖いんですよねぇ」
「そんなあなたに量子力学」
「あぁ、お姉様が大好きなやつ」
「実は東洋医学って量子力学と同じなのよ。
なんでなのかよくわかんないけど、
とりあえず結果はそうなってる。
ここでアインシュタイン博士らは『何故』を追い求め
無駄な時間を重ねに重ねたんだけど、
一方のニールス・ボーア博士らは
『だってそうなってるじゃん』で量子力学を発展させた。
ボーア博士のこの考え方、実に東洋医学的だと思わない?」
「確かに」
「東洋医学がこの先逆転することはありえないわ。
おそらく、そのオカルトというレッテルも剥がれない。
でも、そのロジックは現代科学の最先端である
量子力学の研究にそのまま応用できるのよ。
だから私、現代の物理学者は東洋医学を学べと思うの。
実際、陰陽論の概念から量子力学のスピンに気付いた人もいるし
なんか温故知新の極みって感じで最高に楽しいのよね」
「ほえー、すごい話だなぁ」
「最後に、自分でも簡単にできる肩こりの解消法を教えるわ」
「お! そういうのいいですね!
なんか今日はいつに増して有意義な内容です!」
「文明化の使命に反吐はいてるあたりは同じなんだけどね。
さておき。まずは手の指をこう開いて構えなさい」
「お姉様、それ文章じゃ伝わりません。
お得意のAIイラストでお願いします」
「仕方ないわね。エロ絵以外出力したくないんだけど。
こうよ」
「なるほどわかりやすい。
最初からブライガーの手って言ってくれれば、
人類の98%が理解できますよ」
「ほんとかしら」
「そりゃもうアステロイドベルトのアウトローも震えだすってもんです」
「そうしたら、このクロー系の指のまま手首の
いつもあなたがリストカットしてるとこを
ぎゅって上下に圧迫して」
「人に勝手にリスカ趣味を付与しないでください。
まぁこう手首を揉むんですね。
でもお姉様、これ肩こり解消ですよね」
「そうよ。そしたらそのまま脈の上をほぐしつつ、
手首から肘へ、肘から二の腕へと
入念にもみもみしていって」
「だから肩なんですよね?
まぁいいや。この後そのまま肩ですか?」
「肩を揉む必要はないわ」
「は?」
「それどころか、利き手を使ってもう片方の腕を揉んだら
もう片方を揉む必要もないわ」
「流石に嘘でしょ」
「これは東洋整体におけるチャクラの巡りの概念を利用してるの。
たまに東洋整体院の中に、明らかに静脈動脈とは違う
不思議な体内図が飾られてない?」
「あぁ、ありますね。
NARUTOやHUNTER×HUNTERでも見ました」
「チャクラの巡りは血液と違って循環しているようで
循環していないの。
丹田を中心に四肢に行き渡り、
最終的に手足の指の先に行き着く。
これを解き放つとかめはめ波や波動拳が打てるのね」
「それは流石に嘘ですよね?」
「嘘だと思うんだけど似たようなことしてる
タツジンを見たことがあるから
あながち嘘とも決めかかれないわね。
まぁ99%嘘よ。時間停止AVと同じ」
「その1%見てみたいんだよなぁ」
「で、肩こりっていうのはそのチャクラの巡りが淀んで、
肩に溜まってるから発生してるの。
だからこうして腕の道を開いてあげれば、
自然とそこから気が抜けて肩こりが治るのよ。
これは嘘じゃないわ。
東洋整体の学校で一番先に教わるのがこのロジック」
「東洋整体やべぇですね」
「そして、人間の体って基本的に左右対称でしょ」
「そうですね。左右対称じゃないのは
あしゅら男爵とシェルブリットのカズマさんくらいです」
「だからね、片方の施術を行うと、
もう片方も勝手に施術が進むのよ」
「まじですか? それも東洋整体の学校で?」
「二番目くらいには教わるわ」
「東洋整体やべぇ。
ていうか今思うとあの耳が聞こえないおばあちゃん、
私の左腕と左肩だけ念入りにやって、
右はさらっと流してたんですよね。
あ、左利きなのバレてるって思ってたんですが、
もしかしてそういう理由ですか」
「そういう理由ね」
「ていうかお姉様、なんでそういうの
いろいろ知ってるんですか?」
「あぁ、これね。
一時期すごい不思議で気になったんで、
評判の東洋整体院に行って、
施術はいいので1時間基礎理論の
講義をしてくれってお願いしたのよ」
「相変わらずこの人わけわかんないんだよなぁ。
まぁそういうのが獲得経験値にアホみたいな
補正が加わる原因なんでしょうねぇ」
「そうね。この知識を得てから量子力学の理解にも
ブーストがかかったし。
あ、ちなみにその1時間の後、
お礼を言って店を出ようとしたら
『あなた早死するよ』って言われて肩掴まれたら激痛がして
そのまま4時間マッサージされてから半年ほど絶好調だったのよ」
「すごい話だなぁほんと」




