「私、戦国武将で織田信長が一番好きなの」
「私、戦国武将で織田信長が一番好きなの」
「にわか乙ですね。
正直お姉様の口からそんなセリフが出るなんて
私信じられないんですけど」
「そうかしら? どうして?」
「私これ、インターネットやテレビのクソみたいな人気投票で
戦国武将人気No1が織田信長になる現象って呼んでるんですよ」
「戦国武将なんて織田信長と豊臣秀吉と徳川家康しか知らない人が
ほとんどだから好きな戦国武将で織田信長の名前が上がる現象ね」
「そうです。ちなみに私は直江兼続さんが好きです」
「あの人の頭の兜の愛ってLOVEの愛じゃないけど」
「愛染明王の愛ですよね?」
「流石に知ってるのね」
「直江状のエピソードとかも好きです」
「そこまで出るならにわかじゃないわね」
「で、お姉様はほんとは誰が好きなんですか?」
「……長くなるけどいい?」
「振っちゃったのは私なので、どうぞ」
「この質問って難しくてね。
まず、あなたの問題定義に喧嘩売っちゃうけど、
私は織田信長って答えていいと思うのよ」
「ふむ。そのこころは?」
「下手に相手の知らない武将の名前を言っても話がそこで終わるのよ。
だから織田信長と答えた上で、
織田家をベンチャー企業に見立てての信長社長の企業戦略論や、
実は全然鉄砲集めてない説とか、
楽市楽座は信長の専売特許じゃない説とか、
本能寺の変の黒幕リストとか、
最近何かと話題の彌助の話とか、
そういうサブエピソードを追加することで
『お、こいつ戦国わかってるな』感を出すのが
この質問に対するベストな回答だと思うのよね」
「なんでしょう。
ひとのこころのわからないコミュ障とは思えない
100点満点の回答でびびってます」
「あとね。私元々、成田長親が好きだったのよ」
「あぁ、のぼうの城の人ですね」
「そこなのよ」
「そことは?」
「私、元々成田長親が好きだったのに
のぼうの城が大ヒットして以来、
私は成田長親が好きなディープな戦国マニアではなく
野村萬斎が好きな人になっちゃったのよ」
「あー……」
「この問題ってもう無限に連鎖する気がしてね。
松永久秀も好きだったのに」
「戦国BASARA」
「島津豊久だって無限に語れるのよ」
「ドリフターズ」
「山中鹿介もいいキャラしてるし」
「戦国ランス」
「もうこんな感じで、
戦国好きの私がどんどん漫画好きになってくのよ。
しまいには真田幸村が好きって話をしたら、
あぁ武田家の武将ですねって言われてキレかけることになるの。
だからもう、好きな武将は織田信長でいっか、って」
「……なんかごめんなさい」