「あなた達、私のこと上に見てるでしょ」
「私ね、世間の大多数やあなたに対して
ずっとイライラしてることがあるの」
「う……申し訳ありません……
可能な限り是正しますので
お話してくれませんか?」
「あなた達、私のこと上に見てるでしょ」
「私それでなんで怒られるんですか?」
「よくね。言われるのよ。
賢い人は貧乏人やバカの気持ちが
わからないんですね、って」
「実際お姉様はわからないんでしょうけど、
そういう話じゃないですよねこれ」
「このまま口論したら100%負けるから、
僕弱いんで許してくださいよね」
「まぁそうですよね。
逃げ道を塞がれてド正論の正論の刃で
ズタズタにされる未来が見えます」
「正論が嫌われるのってよくわからないのよね。
それ全部あなたが手を抜いて楽したいだけじゃない」
「それ言われるのがそもそも嫌なんですよ!
ほんとはわかってるんです!
お姉様もできれば努力はしたくないでしょ!?」
「それはそうよ」
「じゃぁなんでわからないんですか!?」
「よく勘違いされるんだけどね。
私に獲得経験値+1億万%補正がかかってるのって、
虚無から補正がかかってるわけじゃないのよ」
「そうだったんですか?」
「行動する前にまずは調べて考えて、
初動から即座に反省して類似ケースを探して。
最終的にある程度最適化してから一気に追い上げるの。
言うならマラソンレースが始まってみんなが走り出す中、
私だけ路線検索かけて電車に乗って、
車内でレンタカーの予約して駅到着と同時に
車の飛び乗るのよ。当然ナビも入力済みで
近くの美味しいグルメも検索済み」
「なるほど……
普通ヨーイドンって言われたら
まず走り出しちゃいますよね……」
「それで聞きたいんだけど、今のケース。
最終的に42.195kmの山越えルートを走った人と
途中まで電車最後を車で終えた私。
手を抜いて楽したのどっち?」
「お姉様ですね」
「そうなのよ。みんな、手抜きがヘタなのよ。
つまり、手を抜いて楽したいのに、
その手の抜き方を考える時点で楽をしようとして、
さらに手を抜いてを繰り返した結果、
最終的にどうしようもなく効率が落ちて。
で、最後には『あなたはすごいですね。
私はバカなので』って自分を正当化して、
一方的に上から目線を怒ってくるのよ。
死んだら?」
「そう言われるとまぁ……」
「そもそも上から目線ってよく言われるけどね。
私は誰も下に見たくないの。
対等に話がしたいのよ。
私の『バカじゃないの?』に対して求めてる回答は
『こういう理由なのでもしも見えてないなら
バカなのはそちらですね』なのよ。
それに対して『なるほど凄い! ありがとう!』って言いたいのよ。
自己正当化からの投了も逆ギレも求めてないのよ」
「なんか理論派と感覚派の谷間が埋まらないのを感じます」
「感覚派でも現役時代の長嶋監督はすごかったじゃない」
「まぁ感覚派って実際は何も考えてないだけなんですよ」
「真顔でなんてこと言うの後輩ちゃん」
「でもお姉様も自分より凄い人に今の自分を
ズタボロに言われたら嫌ですよね?」
「全然」
「いや言われたことないだけでしょ!」
「ちょっと前にノーベル賞取った先生のとこの人に
学生時代ズタボロに批難されて、
調べてみたらその指摘が全部正しくて、
後で『ありがとうございます!』って菓子折り持っていったわ」
「次元が違いすぎる……!」
「あとその昔ガンダムの格ゲーをゲーセンで遊んでたら、
見知らぬ自称ランカーに『ねーちゃんヘタすぎwww』って煽られたので
『どこがダメですか? 教えて貰えませんか?
コーラとコーヒーどっちが好みですか?』って返したら
物凄く丁寧に教えてくれたわ」
「同じ人の体験談と思えないんですけど、すごいです。
ニュータイプが殺し合いの道具になってないとこ
はじめて見ました」
「下に見られるってつまり相手は
自分の知らないことに気付いてるってことで、
そんなの経験ショートカットの最大のチャンスじゃない。
みんなそれを使えないから獲得経験値に補正が乗らないのよ。
私はそれが欲しいのよ。
もっと私のこと下に見なさいよ。
それで誰も下に見てくれないから人と関わるの嫌で引きこもってるのよ」
「今回はお姉様の獲得経験値補正の謎が判明して震えてます。
ダメだ勝てる気がしない」
「そんなこと言わないでよ。
じゃぁゲーセンでガンダムやってる時に煽られたら
どうするのが正しい反応なのよ」
「お手元のGN灰皿を投げます。
それが動物園のマナーです」
「生の感情丸出しで戦うなど、
これでは人に品性を求めるなど絶望的ね」