shooting range
四人が部屋を出て、まず向かったのは寮のロビーだった。
ロビーは白いカラーコンクリートの床でワックスが塗ってあるため蛍光灯の光を反射して明るくなっていた。
備品も少なく、避難経路が書かれた寮の地図と薄型テレビの様な掲示板ぐらいだった。
透達は、掲示板の所に集まる。
掲示板には、『お知らせ』『緊急』『試験結果』という項目が出ていて。掲示板の横には部屋の鍵穴と同じ挿入式のカードリーダーがあった。
透は、おもむろにさっきもらったIDを差しこんでみる。すると、項目の横に『更新』と赤い文字で小さく現れた。
「へぇー、これってネット掲示板みたいだな」
そういいながらも『お知らせ』の項目にタッチしてみる。
画面が白い背景に切り替わる。
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訓練生各位
訓練生の皆さま、合格おめでとうございます。
また明日、午前九時より講堂に手訓練生入隊式及び施設案内を致しますのでご連絡いたします。
苦しいことやつらいこともあると思いますが、一年間がばって行きましょう
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一通り読み終えた圭介は、案内図を見る。
「講堂は、地下らしな」
「うん、そうみたい」
茉衣も圭介の隣に立って案内図を見てから言う。
「じゃあ、確かめてみる?」
美香の発言で三人は頷いてから地下に向かった。
地下の講堂へ続く廊下も他の階と同じで白く塗られた壁で奥へと続いている。やがて、食堂と書かれた部屋を通り過ぎて、つきあたりになったところがドアの場所まで着く。
ドアの上には『講堂』と白いプラで書かれた。
中に入ってみると、小さい体育館位の広さにステージと固定された机と椅子が配置されていた。
何かを期待していた美香はがっくりと項垂れたのを見た透は忍び笑いをして彼女に睨まれた。
ロビーに戻った透達は少し休憩をした後、外に出ていた。
「次は何処に行こうか?」
まだどこに向かうかも決まっていなくて、適当に散策をしていた時、透は三人に言う。
「う~ん」
美香は軽くうなりながら辺りを眺め始め、ある場所で視線が止まった。
「あそこはなんだろ?」
美香が見つけたのは、コンクリートで固めた小さな小屋の様な建物で、見る限り窓もはまっていない倉庫の様な感じだった。
透達はとりあえず小屋まで来ると、鉄製のドアを開けた。
小屋の中は、ちょうど真ん中に金網と防弾ガラスで覆われたカウンターとその隣に頑丈そうな鉄扉があるだけのこぢんまりしたところだった。
「ホントになんだろう」
「どうした? ここはまだ使えねぇぞ」
カウンターの奥から出てきた仏頂面をした少し太った男性が出てきた。
「いえ、ちょっと気になったものでしたから」
透は少し遠慮がちに言うと、それを聞いた男性は急に顔を緩ませる。
「そうか、そうか。気になって見に来たのか」
その後、爆発したような笑い声をあげる男に、透達は目を白黒させた。
「ここはな、射撃場だ。そこのドアから地下にレンジがあるからすきに見ていいぞ」
にこにこしながら言う。男は笑いながらまた奥へと消えて行ってしまった。
「ど、どうする」
取り残された四人の中で最初に口を開いたのは茉衣だった。
「とりあえず、見てみるか」
透がそう言ってから、鉄扉をあけるとすぐに下に続く階段があり、降りてみると、全面無骨なコンクリート壁で覆われて、カウンターについ立が付いているようなところには銃声を緩和するプロテクターがつい立の所にかかっていて、その上から数十メートルの所まで射撃したターゲットペーパーをかけておくレールが設置してあった。
透達は、射撃場の男性に挨拶してから外に出ると、今度は、施設の外れにある大きな建物に来ていた。
射撃場の男性に『あそこも、見ておいた方がいいかもしれない』と言われたからだった。
「屋外射撃場というよりは実践的な建物だな」
透はその建物を眺めた。
三階建の建物は古びていて所々、何かによって砕けた後や、弾痕の痕が壁に刻まれていた。窓はあらかじめ外されているのか吹きさらしになっていた。
「ん~、やっぱり中には入れないみたい」
唯一、防弾ガラスで覆われたドアを開けようとする美香だったが、どうやら、鍵がかかっていたらしくガタガタと揺れるだけで一向に開く気配はなかったのだった。
「仕方がないか。無断で入るわけにもいかないし、それにそろそろ日が暮れるから寮に戻ろう」
透がそういうと三人は頷き、寮に戻ったのだった。