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Black Back  作者: 宿野部 淕闍
第一章 はじまり
4/8

始まりは教会から


西暦2042年3月末


 東京郊外にあるとあるき教会がある、隣は教会が運営している孤児院がある。

 とある部屋で1人の少年が目を覚ました。

 窓からのぞく外の世界は薄暗く朝靄が出ていた。

 少年は同室の子たちを起こさないように静かに起き上がり、ベッドの下から荷物を出した。

 音を立てずに部屋から出て、孤児院と教会を結ぶ渡り廊下を渡る。

 孤児院からすぐに道に出ることができるが、今は門が塞がれていて鍵がないと出られないのと、仮に鍵があったとしても重く寂が付いた鉄の柵が大きな音を立てて孤児院の子たちを起こしかねないからだった。

 教会の方はというと、誰でもはいれるように入り口の鍵はかかっていないので容易に出ることができる。

 少年はあの日から考えてとった行動だった。

 教会は神聖な空気と外の冷たい空気で少年の吐く息が白い煙となって出てくるのを無視し教会の外に出る。

「加藤君」

 教会の階段を下りてすぐ、少年の名前を呼ぶ声がして振り返る。

 さっき、出てきたところに40代くらいの男性と、修道服を着た20代半ばの女性が立っていた。

「神父さん。それにシスター……なんとか」

 少年は多少驚いたがあまり気にすることなく言う。

「わざとね。絶対わざと」

 シスターらしかぬ仁王立ちをして怒ったような口調で言うシスター。

「もう行くの?」

 いきなり態度が変わるシスターに半ばあきれつつも、いつもの子だからと気にしないようにしている。

「行きます。ホントならあの子たちにもあいさつしなきゃいけないと思うんですけど……」

「ならちゃんと挨拶しなきゃ」

 少年の言葉を最後まできかずにシスターが言う。これもいつものことなのでたいして気にはせず、

「わかってる。けど、あの子たちの悲しいかを見たくはないんだ。きっといけなくなっちゃうから。だから……だから昨日みんなに手紙を書いて枕の横に置いておきました」

 少年はちらりと神父を見ると、コクリと頷き優しいほほ笑みを浮かべた。

「そう」

 悲しい目でシスター麻利亜は言う。あまり見せないその悲しい顔を見て、少年は一瞬ドキッと胸が高鳴った。

「つらくなったら、いつでも戻ってきなさい。ここは透君の家なのだから」

 優しくほほ笑みかける神父様。その言葉で少年は感謝の心で一杯になった。

「ハイ……そろそろ始発のバスがきますので、失礼します」

 少年はそういうと歩き出す。が、数歩で止まり振り返って、

「神父様、シスター麻利亜。お元気で」

 深々と頭を下げ別れの挨拶をし、逃げるようにバスの停留所に向かった。


 少年の名前は、加藤透。

 ある事件がきっかけで孤児院に入所し、2年を何不自由することなく過ごしていた。

 歳は12で本来ならば中学に入学する予定であった。そう本来なら……


 バス停に着くのと同時に始発のバスが止まる。

 透はバスに乗り込みバスターミナルに向かい、そこから高速バスに乗り換えた。

 二人掛けのシートに座り開いた空間に荷物を置くと、どこから出てきたのか 異様に膨れ上がった封筒がボトリと床に落ちた。封筒を拾い上げ中身をみるといくつもの紙束が入っていた。

 その中の1枚を出してみて、透は思わず泣きそうになってしまった。

 それは孤児院みんなからの手紙だった。

ーーきっと、あいつの仕業だな。

 頭の中で悪戯っ子の笑みを浮かべているシスターの顔が出てきて、ため息の後に笑みがこぼれていた。

 透は手紙を読んでは仕舞いを繰り返し、最後の手紙を読む。

『拝啓 加藤透様 いや君でいいかな

 まさか君がこんなに早くここを離れるとは思いもよらなかったよ。

 此処を出ていくといった日、私は始めて君に会った日のことを思い出してたのだよ。

 始めてあった君は表面上では明るくふるまっていたようだけど、長年教会の神父と孤児院の院長の経験から君の心、いや身体もボロボロでいつ居なくなってしまうか心配で片時も目が離せなかった。

 だが、あの子たちが君の心も身体も癒してくれたようで、私は今、君が出ていくことを快く送ることができるだろうと思う。

 身体に気をつけて、困っている人を助けなさい。きっと神様も見守って下さることだ。


P.S. たまには戻ってきて子供たちの笑顔を見に来てほしい。子供たちもきっと喜ぶだろうから。


 孤児院院長兼教会神父  立花誠一』

 その手紙は神父様からだった。

 手紙をしまいながらホントにいい人だと思う透。手紙の入った封筒を大事にカバンの奥に仕舞いこみ、透はこれからのことを考える。


 行先は里親ではない。俺は、時代の流れに乗るのだ。

 今の時代は混とんとしている。各国の地域でテロや犯罪が行われていた。日本も例外ではなかった。そのせいもあってか日本の法律が大きく改正され、自衛隊は撤廃し代わりに国防軍と言う偉い名前に変わった。銃刀法での改正もされ、民間での使用が緩和され、ライセンスさえ持てば誰でも自由に所持ができるようになったが、政治家が甘いのか世界がそうさせたのかアメリカに次ぐ銃犯罪国家になってしまったのは言うまでもない。

 だが、精巧な部品などには世界が認めていていた。

今や大企業となっているケルビム社。製薬会社から始まりいろんな分野に手を出し今や軍事関連やロボット工学では上位の座にいる大企業。次いでWVGである。これはもともとは不動産から始まり医療器具、玩具、ホビー、軍事関連などに手を伸ばしケルビム社よりはやや劣るがそれでも世界で見れば上位に入る。

 WVGに次いで余りかのMS者である。もともとはコンピュータ関連から始まり20世紀末には世界的シェアをもつOSを作り出した。今はそれに加えて一般家庭用オートマタと呼ばれる制限付きAIや製造をしている。この3社をKWMと呼ばれている。

 

 透もその混とんの中に入ろうとしていたのだった。

 

 


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