アラクネVSリアム中佐3
「あへ?」
リアム中佐の首から情けない鳴き声が響く。首が地面を転がり、リアム中佐の体が倒れる。
「お、俺、俺の体・・・」
「しぶといわね、まだ生きているの?」
魔物であっても、首だけで生きていられるものは少ない。その点では、リアム中佐は並の魔物より上だと言えるだろう。
「ししし、死ぬ? 俺が、死ぬ?」
「その姿じゃ、何もできないわよね。放っておいても死にそうだし、バイバイ」
アラクネはリアム中佐の首を放置し、とりあえずジーナの向かった方へと歩き出す。
「死にたくない、死にたくない、死にたくない・・・。ま、魔人化! ぐがああああ!」
リアム中佐の首が真っ黒に染まり、その首から体が生えだす。その体は、全身が真っ黒であった。
「なに、それ。悪魔憑きじゃないの?」
その異様ぶりにアラクネですら畏怖を抱く。全身を黒く染めたリアム中佐の顔には表情が無かった。そして、姿が消える。
「え?」
アラクネですら、リアム中佐の動きが見えなかった。かろうじて後ろに回り込んだ事が見えたため、後ろを向く。リアム中佐の右手には、アラクネの右腕が掴まれていた。
「あぐっ! 嘘っ、私の、腕が!」
リアム中佐の握っていたアラクネの腕は、灰のようになって消滅する。Sランクのアラクネの魔障壁を貫通するということは、今のリアム中佐の強さはAランクもしくは―――。
「馬鹿、なっ、まさか、人間が、Sランク・・・?」
アラクネはもう油断しないと、人型をやめ蜘蛛の体へと戻る。右腕をすぐに再生させ、見た目上はノーダメージに見える。実際は、魔力を使用したため損失はある。
リアム中佐は、アラクネに人差し指を向ける。そして、無詠唱でピンポン玉くらいの火の玉を飛ばした。高速で飛ぶその火の玉は、アラクネの魔障壁とぶつかり爆発する。
「魔法はBランク程度ね、それじゃあ私には効かないわ」
一瞬で発動したにしては威力が高いが、これを何発撃たれようとアラクネにはダメージが入らない。それをリアム中佐はすぐに学習したのか、次に飛ばしたのは拳大だ。
「わざわざ受けると思っているの?」
アラクネは、今度の魔法はAランク程度だと見積もり、躱す。正直、普通にさっきの腕をもいだ時の動きの方が早い。火の玉は背後の壁を数十メートル貫通し、爆発する。核シェルターを想定している訓練場でこの威力では、施設が壊れるのも時間の問題だ。
「このままじゃ、生き埋めになるわね。ちょっとあなた、少しは考えて攻撃しなさいよ」
アラクネはリアム中佐に話しかけるが、返事が全くない。どころか、意思があるのかすら分からない。そして、返事の代わりに姿が消える。
「今度は、見えたわよ」
リアム中佐の攻撃の正体は、ただ本当に腕を掴むだけだった。つまり、単純に力でアラクネの腕をもぎとっただけだ。しかし、それが最低限の肉体での攻撃であれば、油断する理由にはならない。
リアム中佐の攻撃をかわし、その背中に毒の針を代わりに撃ち込む。この毒は、アサシンスパイダーの毒の何倍も強力で、Aランクの魔物であってもただでは済まない。
「やっぱり、効かないのね」
リアム中佐の背中は、溶けるどころか針がただ抜け落ちる。抜け落ちた針は、即座に地面を溶かして地中へと消えたというのに。
「はぁ・・・。ジーナ、早く戻って来ないかしら」
戦闘力の低い自分では、リアム中佐を倒す事は出来ないと判断し、ジーナが戻るまでの時間稼ぎへと戦闘方針を変えた。




