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世界の異変  作者: 斉藤一
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アラクネ

「すごいわね。一体どうやって片付けるのかと思ったら、何あの魔法? 威力、おかしくないかしら?」


「誰!?」


タケルは、声のした方を向く。そこには、上半身が美女で下半身が蜘蛛の魔物が居た。今の今まで全く気配を感じる事が出来ていなかった。殺気は無いが、前に見える今でも気配は薄い。


「アラクネ・・・本当に、この世界に来ていたんですね」


「エルダーエルフ。あなたの事は知っているわよ? リナリア・・・さんもこの世界に来ているのかしら?」


「エルダーエルフさん、知り合いですか?」


タケルは友好的に話しかけてくるアラクネと呼ばれた魔物を見る。エルダーエルフの知り合いであれば、戦う必要は無い。


「私自身は初めて会いますが、以前、リナリア様が会ったことがあると話されていました」


「ちょっと、そこの少女。殺気を引っ込めて貰えるかしら? 私に戦う意思は無いわよ?」


アラクネはシュガーの方を見て言う。シュガーはタケルを守るようにタケルの前へと出る。


「あなたは私と同じ、配下を操って戦うタイプだと感じます。お兄さん、油断しないでください。すでに囲まれています」


「すごいわね、私のアサシンスパイダーの気配を読めたの? でも、勘違いしないで欲しいわ。これは自分の保身であって攻撃する意図は無いわよ」


アラクネはアサシンスパイダーに念話で指示し、下がらせる。自分の護衛は減るが、今敵対するよりはましだと判断した。


「私自身、そこまで戦えないから。そうねぇ、強さで言えばエルダーエルフといい勝負よ」


「御冗談を。それは身体的な能力であって、実際に戦えば私なんて瞬殺されるはずです。リナリア様がランク付けした強さで言えば、アラクネは確実にSランクです」


「Sランク・・・エンペラースライムと同格ってことか」


「あれと同格って言われると、何か弱く感じるわねぇ。少なくとも、普通に戦えばあれよりは強いわよ」


アラクネは、エンペラースライムと同格といわれるのは納得いかなかったらしい。タケルもSランクであるが、エンペラースライムには苦戦するような気がしているので、油断はしないことにした。


「この付近の魔力が薄い理由が分かりました。アラクネ、あなたがずっとここで魔力を吸収していたんですね? 目的は? この世界を支配するというのであれば、我々も全力で抵抗させて貰いますが」


「ちょっとちょっと、早とちりは止めてくれる? 確かに、ここの魔力は私が吸収してたけど、別に世界を手に入れるつもりは無いわよ。どうせ前にここに来たオリジンも居るんでしょ? 戦うなんてムリムリ。魔界へ帰る方法があるなら、すぐにでも帰りたいのよ」


「一つ聞かせて下さい。僕たちがクイーンスパイダーと戦っていた時、あなたもこの場所に居たんですか?」


「当然、居たわよ? これほど魔力が溜まる場所なんてなかなか無いでしょうし」


「ではなぜ、クイーンスパイダーを助けなかったんですか? いえ、どうしてクイーンスパイダーを止めなかったんですか?」


「勘違いしないで欲しいんだけど、私はクイーンスパイダーを操っていないからね? 彼女は自分の意思で行動していただけ。自由意志を持つ子の一体が何をしようと自己責任でしょ? それに、あそこで彼女を助けたら、あなた達と敵対する事が確実だったでしょうし。それだけは避けたかったの。ついでに、私が見つからなかったのは、隠密には自信があるからよ。魔界でも私の気配をたどれる魔物なんてほとんど居ないくらいには。本気で気配を消せば、ほら――」


アラクネが目の前からスッと消える。タケル達は辺りを見渡すが、アラクネは見つからなかった。


「ね? だから、私はあの場所にはいたけれど、私が何かしたわけじゃ無いわ」


アラクネは同じ場所に現れる。実際、全く動いていなかったのだから同じ場所に現れるのは当然のことだ。


「リナリア様の探知にひっかからなかったのもその特殊能力のせいみたいですね・・・。分かりました。魔界に帰りたいだけならば、リナリア様に協力してください。リナリア様は、魔物が魔界へ帰れるように今も魔力を集めているのです」


「それなら協力するわよ。あっ、この見た目だと目立つわよね? その子みたいに変化するわ」


アラクネはそう言うと、蜘蛛だった下半身が人間と同じ足になる。同時に、ほとんど裸同然で蜘蛛の毛だけで体を隠していた様な状態だったものが、きちんと人間の服を着た状態になる。


「人間が着ている物を真似て作ってみたわ。糸で何かを作るなんて、私には簡単な事だから」


一瞬で服を編んだ技術に、一同は驚く。そして、Sランク魔物であるアラクネが作った服は、Bランク魔物が全力で攻撃しても傷一つ付かないほどの高性能な防具でもあるのだった。まあ、素の防御力はそれ以上なのでアラクネが着る分には普通の服を着るのと変わらないが。


「とりあえず、よろしくね?」


アラクネのウィンクに、いまいち信用しきれないタケル達であったが、目的は達したので帰る事になった。エルダーエルフがリナリアに魔道具で確認したところ、連れてきても良いと許可が下りていたのだ。



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