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世界の異変  作者: 斉藤一


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5尾

ヨーコの魔法陣の起動から24時間が経たったので、改めて様子を見に行くルタとエリザ。しかし、扉の前で2人の足は止まる。


「・・・開けるわよ?」


エリザは開ける前に中へ声をかける。前回の様な嬌声が、中からきこえてくる事は無かったが、無断で入るのは気がとがめた。逆に、静かすぎて怖い。


「返事が無いの。まさか、死――」


「万が一にも死ぬことは無いわ。ただ寝ているだけなら良いのだけど・・・」


エリザはゆっくりと扉を開ける。部屋の中心でヨーコが倒れていた。床は何かの液体で濡れているが、恐らく汗であろうと決めつける。


「はぁっ、はぁっ、うち、壊れてしもう・・・」


エリザが近づくと、ヨーコは小さな声でぶつぶつと呟いていた。どうやら寝言の様だが、大丈夫なのだろうか。見ると、ヨーコの尻尾が5本になっていた。魔力集め自体は成功しているようだが、まだ付近に魔力は残っている。ヨーコの状態を見るに、再び起動させるのはためらわれた。


「とりあえず、一旦外へ運び出しましょうか。・・・ルタ、お願い」


「ワシが運ぶのか・・・。触りたくないのか?」


「見ればわかるでしょう? 触りたくないわ」


服がびしょびしょで、見える素肌も濡れている。エリザでなくても触りたくないだろう。


「仕方ない。ワシが念動力で運んでやるわ」


ルタも触れたくなかった為、念力でヨーコを浮かせて運ぶ。ぐったりとしたその肢体を運んでいるのを知らない人が見たとすると、まるで幽霊が浮いているかのように勘違いするだろう。


「ところで、コハクの修行はどうなったの?」


「順調と言えば順調じゃの。少なくとも、この里に来た時の10倍は強くなっておるぞ」


「それは良かったわ。彼女、自分の実力が劣っていると思って自信を失いかけていたもの。力がつくまで、ただ時間がかかるだけだというのに」


「ほっほっ、その時間が惜しいんじゃろう。周りに置いて行かれるという気分は、少しでも早く払拭したいものじゃ」


「そう言うものかしら」


最初から強かったエリザには、その気持ちは分からなかったが、ヨーコも早く強くなることに貪欲なため、そんなものかと思う。


「ヨーコが目覚めたら、再び魔法陣を起動させるか相談するわ。何か異常があれば止めるけれど」


「ワシが視た感じじゃと、ただ単に疲れているだけの様じゃな。・・・その疲れが何から来ているのかは明言できぬが」


「そう。それなら、もうしばらく里でやっかいになるわね。気になる情報も得られたし」


エリザはハンターから新たに得られた情報で、この里にまだちょっかいをかける者がいる事を把握していた。ちなみに、2人のハンターは気絶させ、すでにギルド本部へと運ばれている。今頃牢屋の中に居る事だろう。


「コハクも、恐らく里への滞在を望むじゃろうな。まだモミジに勝てておらぬし」


コハクは、朱雀の熱に耐えられるようになってきた。また、モミジも朱雀の力の制御をだんだんと出来るようになってきたため、暴発でコハクを死なせる事も無くなった。モミジは戦闘技術を。コハクは白虎の力を引き出す事を学ぶ事を目標に、まだ頑張るつもりである。


エリザ達は、ヨーコを風呂場へと運ぶ。この状態のヨーコを布団に寝かせるのに抵抗があったためだ。念力で服を脱がし、エリザが水魔法でヨーコを丸洗いする。


「ぷはっ!? 何!? 敵襲!?」


ヨーコはその冷水を受けて目覚める。


「汚れを落としているだけよ。服も洗濯に出した方が良いわね」


「それならば、服が乾くまで浴衣を貸そう」


「うち・・・。あっ!」


ヨーコは、自身が裸であることを認識すると同時に、尾が5本に増えていることも分かった。そして、すぐにエリザに向き直ると、頭を下げる。


「うちの魔法陣を起動してください!」


「まだダメに決まっているでしょう」


「そ、そんな~」


エリザは、ヨーコの貪欲さに呆れるのだった。

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