朱雀
しばらくして、術が再開される。今回は、コハクの向かいにはモミジが立っていた。現実世界とは違い、巫女服の様な服装に変わっており、さらに水着の様に薄着で、両肩や太ももより下は素肌だった。
「よ、よろしくお願いします」
モミジがぺこりと頭を下げるので、コハクも同様に頭を下げようとして――
「では行きますね」
一瞬、辺りが明るくなったと思った時には、コハクは蒸発していた。
「す、すみません。まだ私自身、朱雀様の力を制御できなくて・・・」
「いや、ああ、まあ・・・」
コハクは何と言っていいか分からない。気が付いた時にはすでに死んでいた。それこそ、最初の白虎様の様に攻撃がかすかにでも見えていれば対処の仕様もあるのだが、モミジの準備段階ですでに死ぬほどの攻撃になっていたのだ。
「ほっほっほっ、さすが四神一の攻撃力を持つ朱雀じゃの」
四神・・・青龍、白虎、朱雀、玄武で獣人にとっては神として崇められている。見た目から、玄武は防御と見られがちだが、玄武は回復力が優れていて、防御は白虎の得意分野だ。
「モミジの準備の前に、コハクが先に準備した方がいいわね。じゃないと、戦いにすらならないわ」
「ぐっ・・・」
コハクは9歳の少女に試合前に負けたので、何も言い返せない。素直に先に白虎の力を身にまとう。地面から力を引き出し、全身を覆う。
「そ、それでは今度こそ、行きますね」
今度は、コハクも力を纏っていたためモミジの姿を視る事が出来た。モミジの腕が赤い羽根に変わり、顔にも鳥のくちばしの様なものがある。足も鳥の足の様に変わり、何より変化があったのはその熱気だ。
先ほど、あっさりとコハクを蒸発させた熱は、朱雀にとっては攻撃ですらなく、そこに居るだけで発生するものだった。
「力を制御できれば、この熱も抑えられると思いますが、私にはまだ無理なんです」
「ついでに、モミジの力の制御の修行にも成ればいいのぉ。じゃから、コハクもがんばるがよい。自力で白虎の力を引き上げねば、戦いにすらならんぞ?」
「分かってるよ」
対峙するだけで、白虎の力を纏っているはずの体の表面が沸騰しそうな熱気に、コハクは集中して力を維持する。
「それじゃあ、えいっ!」
モミジが軽く羽を振ると、そこから羽根が複数飛ぶ。飛んだ分の羽根はすぐに再生し、減る様子は無い。そして、地面に着弾すると同時に爆発した。その威力は、羽根1枚がAランクの本気の火魔法に匹敵する威力だ。当然、そんなものをまともに受ければ即死するため、コハクは回避に専念する。
「あわわ、せ、制御が甘く――」
モミジがそう言った瞬間、コハクは全力で離れる。本能的に、死を感じ取ったからだ。実際、暴発する様にモミジを中心に爆発した。コハクは、爆風に数十キロ吹き飛ばされる。見ると、モミジの周り数キロが吹き飛んでいた。これが攻撃ではなく、朱雀の力が漏れ出しただけだというのだから恐ろしい。
「いや、あたしにも同じ力があるはずなんだ」
モミジのは、これで50%。コハクはまだ10%。制御でき無いとはいえ、モミジは朱雀の力を半分も引き出せているのだ。ならば、それに勝つには少なくとも同じくらい白虎様の力を引き出さなくてはならない。
「じゃないと、戦いにすらならねぇからな」
コハクは、命の危険を感じたからか、少しだけ白虎様の力が強くなったと体感した。でなければ、さっきの爆発で死んでいたはずだ。
「このまま続けることが出来れば、あたしも胸を張って戦える!」
コハクは気合を入れ直し、あわあわしているモミジへ向かって走り出した。




