調査
ギルド本部の客室で、エリザ達とグランドマスターはハンター達の行動について報告をしていた。
「なるほど。だが、そんなクエストは見た覚えがねぇな」
「変ね。クエストの発注には必ずグランドマスターが目を通す必要があると聞いたのだけれど?」
「そうだ。難易度や報酬なんかが適正かどうか、きちんと見なきゃならねぇからな。まあ、俺じゃ無くても副グランドマスターがきちんと見てるはずだ。それでも問題ないはずだが、実際にそんなクエストを出した覚えがねぇのに受けた奴がいるってぇとなると・・・」
「勝手に発注書をだした職員が居るって事よね」
「ああ。おい、アニサ。発注を出したやつと受けた記録は見つかったか?」
グランドマスターは、受付嬢であるアニサにすでに調べさせていた。アニサは受付嬢の中でも有能で、ギルドの片腕的な存在であった。さらに言えば、人間ではないのだ。
「発注した職員はすでに行方知れずになっております。そして、受けたのはガンツ達だけで他にその発注書を見た者も居りませんでした」
「ってーことは、わざと獣人に手を出させた誰かが居るってことだな。その行方不明の職員は?」
「長年ギルドに勤めていたもので、特に異常な行動は見当たらなかったかと。ただ、ごくわずかですが魔力の痕跡がありました」
「・・・成りすましか。やっかいだな」
「はい。一度、職員の状態を調べる必要があるかと思います」
「アニサ、任せた」
グランドマスターがそう言うと、アニサは一礼して部屋を出て行った。グランドマスターは、改めてエリザ達に目を向ける。
「すまねぇな、うちのもんが迷惑をかけたみたいで」
「今の話からすると、誰かの差し金なのでしょう? 謝る必要は無いわ」
「そんでも、実際に獣人達には迷惑をかけた。すまん」
グランドマスターは丁寧に頭を下げる。獣人の代表をエリザと見ての対応だが、実際に迷惑を受けたのはカエデなので、エリザはグランドマスターの正面にカエデを据える。
「彼女が獣人の里の長よ」
「カエデと申します。詳しい話を聞かせてもらってもよろしいでしょうか?」
「実際、でっちあげられたクエストをガンツ達が受けたって話なんだが、クエストの証拠も何もかもすでに隠蔽されててな。アニサの腕でも、詳しい情報を得られるかどうかは分からねぇ。ただ、目的は何となく分かったがな」
「この短時間で? 彼女、すごい能力を持っているのね」
「ああ。受付嬢にしとくにゃもったおねぇ能力を持っていやがるのに、受付嬢にこだわりやがる。あいつが望めば、すぐにでも副グランドマスターにしてやるのに」
「それほどなのね。それで、目的は何なのかしら?」
「獣人の里の魔力が目的みてぇだな。あそこは、魔力が自然と集まる場所になってやがるからな」
「はい。それを利用して、獣人以外が入れない結界を維持しております。そして、その誰かはその魔力をどうしようと?」
「そこまでは分からねぇ。魔力を必要としてるってことが何となく分かるくらいだ」
「それじゃあ、その魔力を何とかしてしまえばいいのね。カエデ、移住する気はあるかしら?」
「・・・移住ですか? 急に言われても、私の一存で決められません」
「長であるあなたの一存で決められない事なのかしら?」
「あ・・・えぇと、はい・・・。私、本当の長ではありませんので・・・」
カエデは、対外用に据えられた表の長であり、実際には結界を張り続けている本物の長が居るという話であった。




