エルダーリッチ
「あちゃー。やり過ぎた」
まだ小さな火がくすぶる焦げた道から、スケルトン達は離れる。タケルは、破壊してしまったお墓をどうしようかと思い悩む。まあ、緊急事態だったからと納得されないだろうか。
「やはり、いきなりの実戦はだめだったようね。訓練場あたりで様子を見た方がよかったかしら」
「もう遅いよ・・・。はぁ、これ、どうしよう」
「その話は、とりあえずこの件が片付いてから考えましょう?」
しかし、タケルの魔法を見たからか、スケルトン達は離れたまま近づいて来ない。そして、そのスケルトン達の列が二手に別れ、そこからフードを被った何者かが歩いてくる。
「あれが親玉かしら。低位のアンデッドを従えているってことは、Bランク上位のリッチ、もしくはAランク下位のスケルトンキングあたりかしら。さすがにロードやエンペラーってことは無いと思うけど」
何者かは、スケルトン達の群れを抜けると足をとめる。視線は分からないが、来訪者であるエリザ達を確認する。
「お前達も魔物だな? ここに何用だ」
「あら、話すことが出来るのね。てっきり、アンデッドだから知能が低いと思っていたわ」
エリザは、相手の出方を見ようと挑発してみる。アンデッドと言っても、グールやスケルトンの様な知能の無いものからリッチの様に魔法を操る事が出来る者まで様々だ。そして、会話が出来るという事はリッチの様な知能の高い魔物の可能性が高まった。なぜ知能が高いのに問題を起こすような事をしたのか、それを聞き出すために。
「ふっ、挑発しても無駄だ。我は邪魔をするものならば排除する役目を全うするのみ。お前たちは、我と敵対するか、それとも仲間となるか。仲間となるなら、同胞を攻撃した行為には目をつぶろう」
「私も別に敵対したい訳じゃ無いわよ? 話が通じるならそれに越したことは無いもの。けれど、人間に危害を及ぼすなら見過ごすわけにはいかないわ」
「人間とはこやつらの事か? こんな動物に危害を及ぼしたからと言ってどうだというのだ?」
アンデッドの感覚では、人間は魔界で言う動物と変わらない存在だった。脅威にもならず、数が多いだけの存在。だから、そもそも人間社会に危害を及ぼしているという認識が無かった。
「私は人間の味方なの。分かるかしら? その干からびた脳みそで」
「・・・多少力があるからと、その不遜な態度はいただけないな。よかろう。貴様らは殺した後、仲間に加えるとするか」
「馬鹿ね。魔物は死体なんか残さないわよ」
「そんなこと、百も承知だ。だが、我には可能なのだよ」
アンデッドはそう言うと、袖下から魔石を取り出す。その魔石から手を放すと、魔石はゆっくりと落下し、地面に落ちると魔法陣を形成する。
「サモン・アンデッド」
その魔法陣から、ゴブリンナイトが現れる。そのゴブリンナイトは、鎧に穴が開き、体のところどころが欠損していて生きているのが不思議に見える。実際、ゴブリンナイトはアンデッド化されているのだが。
「ゴブリンのアンデッド? まさか、魔物のアンデッド化なんて・・・不可能よ」
「それが可能なのだよ。エルダーリッチである我にはな!」
「エルダーリッチですって? そんな、こんな短期間でなぜ?」
「答える義理は無いわ! ゆけ、ゴブリンナイトよ」
エルダーリッチは、問答無用でゴブリンナイトをけしかけるのだった。




