横浜外国人墓地
「妖狐の名前も決まったようですし、今後について話してもよろしいかしら?」
「ええ、いいわよ」
エリザが代表して答える。この話が始まるのを待っていた様に、エルダーエルフがお茶と日本地図を用意する。
「それじゃあ、ソファで・・・といっても、全員は座れないかしら」
「あ、うちは話が終わったら兄さんたちに着いて行くだけやから話自体には参加せんでもえーよな? ほなら、うちは教室にもどるさかい、終わったら呼びにきてやー」
ヨーコはそう言うと、タケルに手のひらをふりふりと振って部屋から出て行く。
「私も、お姉ちゃんに任せるよ」
ジーナはエリザに全権を任せて同じく部屋を出る。残りはエリザ、コハク、タケル、シュガーの4人だ。4人ならば無理やり3人掛けのソファーに座れない事も無いが、その場合はタケルが落ち着かない。ちなみに、リナリアの方は1人掛けのソファーだ。
「じゃあ、あたしはそこで立ってるよ。話自体には参加しないから」
コハクがリナリアの斜め後ろに移動する。3人掛けのソファーに、エリザ、タケル、シュガーの順で座る。何故かタケルが真ん中に座る事になったが、それを指摘するのも変な感じがするのでタケルは大人しく無言で座る。
「それなら、話を始めましょうか。まず、高い魔力を感知した場所を示すわね」
リナリアは、日本地図に魔力で点を打っていく。東京、北海道、京都、大阪―――。
「えっと、観光地ばかりのような気がするんですけど、偶然ですか?」
「いいえ。恐らく、人の集まる場所は何かしら理由があるのだと思いますわ。実際、ユグドラシルの根もそういう場所ほどスムーズに根を伸ばせたようですし、そこにエネルギーが集まる見たいですわ。だからこそ、ユグドラシルの幹である本体を育てる場所に選んだのが東京ですもの」
「最初はバラバラに転移してきた魔物たちも、今では自分が過ごしやすい場所を見つけて根城にしているみたいよ。それに、自然発生する低ランクの魔物も居て、それに対抗するために自衛隊も配備されたりと色々と情勢が変わっているわね」
「その辺の事、僕はまだ全く分からないからなぁ。それじゃあ、僕も――」
タケルは自分の知識が今ではあまり役に立たないと感じて、コハクの様に立ち見しようとしたが、完全に立ち上がる前にぎゅっと服を掴まれる。
「お兄さんは、聞いているだけでもいいので座っていた方がいいですよ?」
「そうね。それに、日本の知識が一番あるのはタケルでしょうし」
実際は、タケルが寝ていた間にエリザは日本の事を調べまくり、日本一日本に詳しい人物になっているのだがそれは内緒にする。シュガーはずっとタケルの傍にいたため、シュガーの知識量は全く変わっていないため、話には参加しないがタケルの横を譲る気は全くない。
「分かったよ。じゃあ、話だけでも。そう言えば、どこにどんな魔物が居るのかは分かるんですか?」
「いいえ、分かりませんわ。Sランクはそもそも姿も魔力も隠せるから、人間が見つける事は不可能でしょうし、そもそもそう簡単に接触もしませんわ。Aランクは以前のオーガキングの様に、ある程度は警察や自衛隊でも捕捉できておりますわ。ただ、実際に手出しできるこちらの戦力が居なかった為、観測だけしていた状態ですわね。そういえば、神奈川県の墓地で不穏な動きがある様ですわ」
「墓地・・・それなら、やはり不死者かそれに関係のありそうな魔物が多そうね」
「今になって急に動きがあるという事は、進化した魔物が居るのかもしれないですわ。本来、こんなに早く進化するはずはないのですけれど、もしかしたら進化間近だった個体がユグドラシルの根の魔力を吸った結果、進化が早まった可能性はありますわね」
「アンデッドの放置は危険ね。やつらは、本能的に味方を増やそうと生者を襲う可能性があるわ」
「それじゃあ、目的地はここ、横浜外国人墓地ですわ」
「久しぶりの調査ね、腕が鳴るわ」
エリザは、力が戻った喜びから、調査が楽しくて仕方がなかった。というよりも、久しぶりにタケルと一緒に居られてという方が正しいだろうか。ただ、エリザ本人はその事には気が付いていない。




