ヴァンパイアエンペラー
タケルが起きた事を、シュガーはエリザに連絡した。この5年間で魔道具の開発も進み、魔石を使う事で魔素の中でも通信可能な魔道具が作られていた。
「タケルさんが起きました。はい、保健室で待機しています」
「あっ、連絡できるようになったんだ? 話し相手はエリザ?」
「そうです。起きたらすぐに連絡を寄越すようにって言われていましたから」
シュガーがタケルのそばから離れないため、シュガーに連絡させることが一番だと思ったエリザは、タケルとの開口一番はシュガーに任せていた。本当は、エリザが一番最初に話したかったのだが、リナリアから魔石集めの代わりに大学での講師役を依頼されていた。魔界に近くなった地球なら、エリザの知識も役に立つという判断だ。実際、今の地球はすでに人間が頂点に立っていない。
「起きたのね」
「うん。おはよう、エリザ。ところで、僕はどうなったの?」
タケルは、エリザに自分の状態を確認する。恐らく、こうなる事を予想していたはずだから。
「もう気が付いていると思うけれど、あなたは私の眷属になったのよ。それも、ただの眷属じゃ無いわ。本来、下級ヴァンパイアとして蘇るはずだったあなたを、シュガーの魔力によって無理やり進化させたのだから。その代わり、5年もの月日がかかったのだけれど」
5年の月日の間に、情報のすり合わせが行われていた。すでに人類に友好だと理解されていたリナリアを含めて魔物の分類訳が行われていた。その中で、エリザは血を扱う魔物ということで、ヴァンパイアという扱いになったのだった。
「えっと、どういうこと?」
「つまり、今のあなたはヴァンパイアエンペラーになっているのよ」
「は? エンペラーって言ったら、あのスライムと同じような強さってこと?」
「何を言っているの? そんなわけないじゃない」
「そうだよね、あんな強いわけ無いよね」
「エンペラースライムなんて、Sランクの中じゃ雑魚よ? 今のタケルなら、普通に一人で勝てるわよ」
「えーーー?!」
エンペラースライムが倒されたあの日、エリザからタケルの事を聞いたシュガーは、存在進化の可能性を聞かされ、ずっとそれを信じてユグドラシルの魔力の濃い保健室で、シュガーはずっとタケルに魔力を注いでいた。タケルの魔力を受け取った事のあるシュガーにとって、タケルに魔力を与えることは簡単ではあったが、一気に魔力を送るとタケルのキャパシティーをオーバーしているため、調整しながらの作業だった。
「今、あなたの心臓の横には魔石があるわ。それも、シュガーが魔力を込めた魔石がね。私も、まさかここまで魔力保有量が高くなるとは思っていなかったわ」
「はい、私、がんばりました!」
エリザのあきれ顔に、シュガーはにこやかにフンスと返す。ユグドラシルの中心である保健室の魔力溜まりは、タケルに送り込む量よりも多いため、シュガーにも溜め込まれていた。そのため、前述のとおり姿が中学生くらいまで育ったのだった。そして、魔力が溜まったのはタケルやシュガーだけではなく、エリザやジーナ、コハクなど器を持つ魔物全員だった。器の無い魔物であるエルダーエルフやヒメは、それ以上強くなることは無い。器の無い魔物がさらに強くなるには、魔石の吸収が必須である。
「ありがとう、シュガー。それじゃあ、僕はエリザやジーナよりも強くなったんだね」
「何を言っているの? そんなわけないじゃない」
「え、そうなの?」
「私はヴァンパイアオリジン。原初の名を持つ、最強の魔物の一角なのよ」
「それがどのくらいの立ち位置なのか分からないのだけど?」
「そうね。魔界で強さを上から数えたならば、両手で足りるくらいね」
「えーーー!?」
タケルは、何度目になるか分からない叫び声を上げるのだった。




