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世界の異変  作者: 斉藤一


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タケルの蟻兵

蟻兵は、姫が鬼火を作ると同時に両手を広げる。すると、蟻兵の周りに複数の火の玉が現れ、さらにその火の玉一つ一つに小さな蝙蝠の羽が生えていた。


「へぇ、面白いわね。私も真似しようかしら」


エリザは、これが何をするのかを予想し、自分もやってみたいと感じていた。


「鬼火!」


「―――!」


姫の鬼火に対し、蟻兵の火の玉は意志を持っているかのように小さな羽を羽ばたかせて、自ら鬼火にぶつかりに行く。そして、残りの火の玉も自動追尾の様に動き回る姫を捕らえに行く。


「この程度の火力で、うちを倒せるわけ無いっしょ!」


姫は、自らの両手に火を纏わせ、蟻兵の火の玉を叩いて打ち消す。さらに、姫は蟻兵に見えない位置から秘かに小さな鬼火を飛ばしていた。そては、蟻兵の羽の付け根に着弾すると、羽を焼きちぎる。


「!!!」


蟻兵は、片羽ではうまく飛べず、墜落する。そこに、すかさず姫が接近し、右手の平を蟻兵に向ける。


「そこまで!」


リナリアの合図で、試合が終了する。姫は、額に掻いた汗を拭く。


「ふぅ、結構強いじゃん。うちも、かなり本気で戦ったんだけどね」


蟻兵には感情が無いのか、悔しそうには見えなかった。クイーンアントは、蟻兵を魔力へと戻す。そして、トテトテとタケルの側にかけていく。


「あの、お兄ちゃんの魔力、欲しいです」


クイーンアントは、そろそろタケルの魔力で蟻兵を作りたくなっていた。蟻兵は、あくまでクイーンアントのイメージで作り出すため、魔法が主体のジーナの魔力で肉弾戦の蟻兵を作ったり、虎の獣人であるコハクの魔力で子猫を作ったりしていた。エリザの時には結構慣れてきていたため、本来の戦闘能力に近い蟻兵が作れていたのだが、やはりクイーンアントにとってはオスであることが重要になっている。


「いいけど、僕はみんなみたいに魔力が強くないよ?」


魔道具で訓練し続けていたおかげか、タケル自身にもほんの少しだけ魔力を持つことが出来るようになっていた。魔素が濃くなってきていたおかげもあるが、本来は魔石の無い人間が魔力を持つことは無い。周囲の魔素を自身の中にほんの少しだけため込むことができる程度だ。それも、一番魔力保有量の低いゴブリンの、さらに100分の1くらいの量しかない。


「いいんです。お兄ちゃんの魔力は、特別だから」


「そ、そうなんだ・・・」


タケルは、何と言っていいか分からなかったが、とりあえず魔力を渡そうとする。しかし、魔力の扱いに慣れていないタケルは、他のみんなのように魔力を形として放出する事が出来なかった。


「僕にはまだ、魔力の譲渡は無理みたい」


「それなら、私の手を握ってください。直接受け取りますから」


クイーンアントが右手を差し出すので、タケルはその手を握る。クイーンアントは、人に近いのか、体温があった。まるで小学生の女の子と手を繋いだかのような錯覚に、タケルはどぎまぎしながらも、魔道具を使う時の様に魔力をクイーンアントに流す。


「あぁ・・・お兄ちゃんのが私の中に入ってくるのが分かります。少し薄いですが、暖かくて、優しい魔力です」


魔力に温かみも優しさもあるわけ無いのだが、クイーンアントにはそう感じていた。そして、クイーンアントは、タケルの魔力を大事に自分の魔力と混ぜ合わせる。今までよりも、丁寧に、しっかりと練り合わせ、それを使った蟻兵を産み出す。

タケルの魔力を使った蟻兵は、全身が甲殻で覆われた、どこぞの仮面のヒーローのような姿だった。両手には、短く反った剣を持ち、剣のみね側には蟻のアギトのような棘が生えている。何より、今までで一番戦闘用に見える姿だった。


「これって、ほぼ100%クイーンアントの魔力よね?」


「たぶん・・・。タケルの魔力はほとんど感じないわね」


エリザとリナリアは、こそこそとその真実について話していた。

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