決闘
昼ごはんの前であるが、空腹で困るのはタケルだけで、コハクもエリザも食事は必須でないため、決闘を優先する事になった
「こっちだ、ついてこい」
大学の一角に、魔法を練習する場所がリナリアによって作られていた
「ここには、防壁が張られているんだ。ここなら思いきり戦っても、問題ないぜ」
エリザは防壁を確認する。リナリアによって張られた結界は、十分に防壁として機能している。恐らく、エルフたちの魔法の練習場なのだろう。
「いいわ。準備が整い次第、かかってきなさい」
「知らないのか? そういうのは、弱い方から先に攻撃するもんなんだぜ」
「だから、そう言っているのよ」
「なんだと!」
コハクは、あっさりとエリザの挑発に乗って攻撃を仕掛ける。しかし、それは単純な右ストレートだったため、エリザは少し横にずれるだけで回避する事が出来た。だが、その速度は獣人らしく高速で、もしタケルが攻撃を受けた場合は恐らく重傷を負っていただろう。
「遅いわね」
「まだ、全力じゃねぇ!」
コハクは、右左と拳を振るうが、エリザはそれを簡単に躱す。コハクは、じれて回し蹴りや蹴り上げなども混ぜる。
「うわっ……」
タケルは、そのたびにスカートがめくり上がるのを見て顔を赤くする。タケルの声に気づき、コハクはタケルの視線を追うと、自分のスカートを見ている事に気が付いた。
「て、てめぇ! 勝手にあたしのパンツを見るんじゃねーよ!」
「えぇ……。これから戦うのに、スカートをはいている方が悪いんじゃ」
「仕方ないだろ、生徒はスカートが原則だって、リナリア様が言うんだから!」
リナリアは、スカートの方が可愛いからと言っただけで、別に原則にはしていない。その気になったコハクが、勝手にスカートをはいているだけだ。さらにいえば、一応動きやすい様に短めである。
ちなみに、魔界でも獣人は服を着ているのが普通である。
コハクは、スカートを押さえながら戦うため、先ほどよりも明らかに動きが悪くなっていた。
「そんなんじゃ、絶対に私に勝てないわよ。それなら、もう終わらせようかしら」
「な、なめるな! 獣拳!」
コハクは拳に魔力を込め、正拳突きのように真っすぐ拳を突き出すと、魔力の塊がエリザに向かって飛ぶ。獣人は魔法は苦手であるが、魔力の扱いが下手な訳では無い。
「あら、いただくわ」
それをエリザは口を開いて閉じる。それだけで、コハクの魔力の塊は削れ、消滅する。
「ななっ、なんだって、食べた!?」
「こんな加工されていない単純な魔力なんて、私にとってはただのご飯よ?」
「くそっ、そんな見た目で卑怯だぞ!」
「見た目も関係ないし、卑怯でもないでしょう……」
エリザは呆れ、さっさとこの勝負を終わらせる事にした。
「じゃあ、今度はこっちのばんね。スカーレット・スカー」
エリザは、魔力を深紅の爪状に伸ばし、空間を切り裂く。すると、その斬撃は即座にコハクを切り裂いた。
「があっ! あたしに、ダメージを与えるなんて」
コハクの服が切り裂かれ、そこから血が滲むのが見える。つまり、エリザの攻撃はコハクの魔力障壁をやすやすと貫通する事が証明されたのだ。
「こうなったら、あたしの本気を……あたっ!」
「やめなさい」
コハクの全身を魔力が覆うのと同時に、コハクの頭に手刀が落ちる。そこには、いつの間にかリナリアが立っていた。
「使用許可の出ていない練習場に魔力反応があるから来てみれば……。この場所では、問題を起こさないようにって言っていなかったかしら?」
「は、はい……おっしゃっていました……」
「それなら、どうしてこんなことを?」
「これは、こいつらを舎弟にしてやろうと思ったら、反抗されたから………」
「はぁ。あなたには絶対に無理よ。まずは実力を測れる実力をつけなさい。そうだわ!」
リナリアは、いい案が思いついたとばかりにパンと手を叩く。
「ねぇ、エリザ。さっきの計画に、この子も一緒に連れていってもらえないかしら?」
「えぇー、どう見ても足手まといでしょ。それに、計画は秘密じゃ無いの?」
「言いふらさなければ大丈夫よ。どうせ、目立つからすぐばれるでしょうし。それに、バレた所でやめるつもりも無いもの」
「あ、あたしはリナリア様のお傍に!」
「だめよ。貴方には経験が足りないわ。どうかしら? 連れて行くだけでいいから。今ならAランクの素材をつけるわよ?」
「……知ってて分けたんでしょ? 分かったわ。ついてきてもいいけど、守らないわよ?」
エリザは、Sランクの魔石だけでは魔道具にならないことを知っていて、リナリアが報酬に素材の方を提供したのだと疑う。だが、エリザとしても高ランクの素材はあって困らないため、邪魔にならないなら連れていってもいいと思った。なぜなら、戦力が増えればタケルの安全が確保しやすくなる。
「それでいいわ」
「リナリア様!」
「もう決まったのよ。きちんと、やり遂げなさい」
「はい……」
コハクは、少しうなだれながらも従うのだった。




