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世界の異変  作者: 斉藤一


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講義

「そうですわ、せっかくですから私が講義をしましょう」


リナリアは、パンと手を叩いて提案する。


「いいんですか? 理事自らが講義をするって聞いたことが無いんですけど」


「別に、したらダメというルールも無いですわ。それに、今は特に授業内容も決まっていませんし」


タケルの問いにリナリアは答える。講義は、各先生(教授)たちの判断に任せられているが、内容が今後役に立つのかは分からない。それならば、異世界の事をよく知るリナリア自身が教えた方が良いのではないかと思いついたのだ。


リナリアは、その提案が一番いいと感じ、さっそく教室へと入る。リナリアの登場により、席を立って話していた生徒たちは、着席を始めた。


「今日は、新しい学生も入ってきた事ですし、私が講義を行いますわ。内容は……」


リナリアは、ホワイトボードにマジックで文字を書いていく。数日前に地球に来たばかりとは思えないような綺麗な字で。


「危険度ランキング、ですわ。この世界に来た生物の中には危険なものが多いですもの。それを知っておく事に悪いことはありませんわ。対抗策は、おいおい教えるとして、今日はこれでいきますわ」


ある程度術によって意識改革されている生徒たちは、リナリアの講義を疑う事無くノートに写し始める。


「ランキングは、一番上をSSスーパースペシャルランクとして、Sスペシャルランク、Aランク、Bランク、Cランク、Dランクと分けられますわ。これはあくまで、私が判断していることですので、能力や地形などで場合によってはランク以上の脅威となるかもしれませんが、平地で相対した時の場合と考えていただきましょう」


リナリアは、ちらりとエリザを見て、余計な横やりを入れないように釘を刺す。


「本当は、Sランクですべてまとめてもよいのですけれど、一番弱いSランクと、SSランクに入れる魔物とでは強さが天地ほど離れておりますの。ですから、あえてSSランク、Sランクと分けておきましたわ。まずは、一番下のDランクから説明しますわね。Dランクは、魔力総量が低く、魔力を魔法として使う事が出来ない魔物で、主にゴブリンやコボルトの様な魔物がそれにあたりますわ」


すると、生徒の一人がすっと手を挙げて質問する。


「それは、どのくらいの強さですか?」


「いい質問ですわね。私が知っている地球の武器でいえば、拳銃では傷すらつきませんわ。せめて、対物ライフルかロケットランチャーくらいでないと殺すことは出来ませんわ」


「えっ、一番ランクの低い魔物ですよね?」


「そうですわ。基本的に、魔力と伴わない攻撃では、魔物を殺すことは難しいと考えておいて下さい。そして、地球上のどんな兵器をもってしても、Aランク以上の魔物を殺すことは不可能ですわ。仮に、地球上の核兵器をすべてぶつけたとしても、Aランクの魔力障壁を破壊する事は不可能ですのよ」


「そ、そんな! それじゃあ、Aランクの魔物が1匹でも居たら地球は終わりじゃ無いですか!」


魔物を1匹と数えた生徒に、リナリアは一瞬眉を寄せるが、今は咎めることはしない。


「安心できるかどうかは分かりませんが、幸い魔物に食事は必要ありません。なので、食事を目的とした殺戮なんかはありませんわ。仮に、魔力を得ようと思えば、人間ではなく、他の魔物を襲う事でしょう」


「分かりました。ありがとうございます」


生徒は、不安をぶつけたいと思っていたが、リナリアが指を振ったことによって気持ちが落ち着いたため、質問を終えて席に着いた。リナリアが鎮静の魔法を使ったのだ。


「では、逆に上から教えた方がよろしいかしら。Sランクは、エンペラーと呼ばれる魔物の王達ですわ。Aランクはキング、Bランクはジェネラル、Cランクはエリートという称号がついていますわ。ただ、強さ的には魔物の種類によって上下しますけれど。例えば、一番弱いゴブリンキングは、Aランクですけれど強さはBランクですわ。ただ、キングには基本的にジェネラルやエリートの兵士がついているので単体での強さはあまり意味がありませんけれど」


タケルは、横にいるエリザにこっそりと質問する。


「ねぇ、ヘルハウンドはどのくらいの強さなの?」


「強さ的にはエリート。つまり、Cランクね。けど、魔力低下で実際はそれ以下だったのでしょうけど。あ、ちなみにジーナが倒したメデューサはAランクね。メデューサは群れを作らないから、単体での強さはAランク、脅威としてはBランクかしら。その辺は、さっきリナリアが言った通り、状況によりけりなんでしょうけど」


「え、それを簡単に討伐するジーナってSランクとか?」


「リナリアがつけたランキングなら、そうなるのでしょうけど、ジーナも別に群れを作らないから単純比較はできないでしょうね」


「じゃあ、そのジーナが従うエリザって……」


「では、SSランクはどのくらいの強さなのでしょうか?」


タケルがエリザと話しているうちに話は進んでいたようで、生徒がSSランクについての質問をしていた。


「SSランクは、私達魔力のある世界の神ともいえる存在ですわ。魔力のある世界、略して魔界と呼びますけれど、魔界でその存在を見かけたら、すでに殺さているといレベルですわね。ちなみに、ドラゴンはAランクですわよ?」


「ドラゴンがAランク……?」


タケルの中で、ランク付けが分からなくなってきた。メデューサはAランク、けれどドラゴンもAランク。Aランクは核兵器すら効かない化物達。そして、それを討伐するジーナ。さらに、ジーナよりも強いと思われるエリザ。


「エリザはSSランク……?」


「どうかしらね? 私、今は魔力不足だし、本来の強さの何割だせるかも分からないわ」


少なくとも、メデューサよりも強いジーナよりも強いエリザは、タケルの中ではSランク以上だと判断した。


「じゃあ、リナリアは?」


タケルの声が聞こえた訳では無いだろうが、他の生徒が質問した。


「先生の強さは、どのくらいですか?」


「秘密よ」


リナリアは、間髪入れずに答える。口に人差し指を当てて、エリザに口を挟まないようにウィンクした。けれど、エリザはそれを無視してタケルにだけ聞こえるように答える。


「少なくとも、私と同等かそれ以上ね」


「え……それって、見ただけで死ぬ様なSSランクって事じゃあ」


「はい、それじゃあ、今日の講義はここまでよ」


リナリアが、講義を終えた事でタケルはその答えを聞くことは出来なかった。

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