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邪悪との合流

読んでもらえて嬉しいです。

2人を見たアムステルの第一声は


「若いな!!!」


だった。


たしかにフジヤマと真昼はまだまだ10代半ばの体つきだし、顔も幼い。それに比べてアムステルは妙齢…。そう、あの日あの夜の30才手前の姿そのままだった。


「くっ!やっぱり私だけだったか!変だと思ってたんだ!」

「アムさん、すごい早く生まれちゃったの?」

「いや…。そろそろ15年目。年は同じだと思う。はぁ…私も10代の肌感をやり直したかった…」


大きく落胆の色を見せるあたり本当に残念らしい。

心底不思議そうな顔の2人にアムステルが告げた。


「私はこの見た目のまんま卵から生まれたんだ」

「え」

「きもっ」


真昼が酷い。

フジヤマと真昼は童話などでよく見る転生者の伝承通りだったが、アムステルは違ったようだ。


転生者伝承とはこうだ。


『転生者に親はなく

ある日突然、孤児院や教会のある都市町村の入り口に赤子の姿で現れる

物心着くと自身の名を口にし

類稀なる才能を覗かせる。

女神から稀有なギフトを様々託され

人々を助け、導き、発展させる。

自身でギフトを自覚すると覚醒し、その力を一層増す』


これはこれまでの少ない転生者記録を史実として残したものからの抜粋だ。

広く人々の間に拡がっており、童話や歌劇などで語り継がれ子供から大人まで大人気だ。

お陰で都市町村には漏れなく孤児院や教会があり、孤児を大切に育てる。

中には転生者の稀有なギフトを当てにして大儲けを企み孤児を集め、飼育するかのように育てる輩がいる国があるとも聞くが、そもそも転生者の数は少なく実益になるとも思えないので実際はどうだろう。その上、基本的にどの国も転生者への手出しは重罪だ。

このエンターナ国もそれに漏れず、転生者は王族と同等の立場にあり丁重に扱われる。

有事の際に協力の打診はするが行動に抑制も強制もなく自由が認められている。

それでもこれまでの転生者たちは一様に協力的で、良く人を助け、聖人であったと記録されている。とはいえやはり転生者自体が少なく極めて僅かな史実しかないのだが…

何もせずとも暮らせる待遇を与えられるが何もしない者などいなかったという。


「じゃぁやっぱり転生者鑑定を受けるために旅して来たの?」

「うん。色々調べたけど、エンターナが1番待遇がイイしな。それにフジヤマと真昼がこの街にいるのも分かってたから、鑑定一緒に行こうと思って」


2人がこの街で暮らしていることをどのように知ったのか。

この街の孤児院で育ててもらった2人は、孤児院運営の足しにしてもらおうと10才を数える前から冒険者として収入を得ていた。

幸いにしてこの街の大きな酒場には王都の冒険者ギルド員が出張し、大きな依頼も受けられるように常駐している。2人のギフトの詳しい内容は15才になるまで分からないが、若くとも優れた冒険者で有名であった。だが、それでもそこそこの活躍。

名前が遠い地まで轟いているほどではない。

顔を見合わせている2人にアムステルは「あぁそうか」と納得したあと、パチリと指を鳴らした。

それと同時に何も無かった空間に生き物が飛び出して来た。


「おぉ」


真昼が驚いた声を上げる。

パタパタと羽を動かし、その場に滞空し続ける黒い生き物。大きさは猫ほど。多少丸いがコウモリだ。


「眷属なんだ。数はそこそこいて、生まれた時から世話になってる。各地に飛ばして情報収集をしてくれたりもする。映像を見る事は出来ないけど、大まかな情報は伝えてくれるし、命令には忠実で助かってるよ」

「なんて便利…そして可愛い」


呟く真昼の横でフジヤマは無言だが一層羨ましそうな目を向けている。

アムステルの話では、それこそ長い眠りから目覚めるが如く卵から孵ると、待ってましたと言わんばかりに眷属達が世話を焼き始め、衣食住も揃っており、生きる為の不自由は何一つ無かったという。

なのでまずはその眷属達に名前をつけるところからスタートしたそうだ。

名付けを連続すると消費される魔力のせいで眠くなってしまうそうで、しばらくは名付けては寝て、名付けては寝てと繰り返し、それこそ赤子のような生活だったという。

眷属はコウモリの他に頭部が山羊、身体が人型の執事もおり『ゴスロリ遊園地』みたいな邸の中でとても楽しい毎日だったのだとアムステルは笑った。

『ゴスロリ遊園地』なんてものはアムステルが勝手に考えた形容詞のようなものなのでピンとこなくとも、懐かしい友人の通常運転を前に2人は気にしなかった。


「妖精たちが『邪悪邪悪』うるさかったのはこの子のことかな…」


ふいに真昼が疑問を呟いた。


「真昼は妖精の声が聞こえるのか」


アムステルが少しばかり目を見張る。


「うん。たまに姿も見えるよ。今朝から妖精たちが何事か教えてくれてたんだけど『邪悪』がなんだか分からなくて」

「そうか、真昼は妖精の…」


アムステルは顎に手を当て少し思案する様子を見せたがすぐに続けた。


「邪悪で、まぁ合ってるよ。私の種族はヴァンパイアだから」


フジヤマと真昼はしばし言葉も無く呆けた顔になったが、何を思ったか真昼がキッチンに走った。

が、すぐに戻ってきて手にしていたものをアムステルにポイっと投げた。アムステルがとっさにそれを両手でキャッチする。


ニンニクだ。

食べ物を投げるんじゃないと、肩を竦めて


「気になって私も色々試したけど、この世界のヴァンパイアは日光もニンニクも克服済みらしい」

「なんだ、ツマンナイ。駄目なものは無かったの?」

「銀の杭だけはやっぱり駄目みたいだ。酷い火傷と、触れてる間は魔法が使えなくなってしまう」


酷い火傷を想像したのだろう、真昼が「うわぁ」と声を上げた。

ふっと笑って、アムステルは辺りを見回した。


「てか、いい家だね。二人暮らしだったのか」


ゆっくり話せるようにと先ほどの草原広がる丘から、フジヤマと真昼が暮らす家へと場所を変えていた。

木造の小さな一軒家。

冒険者として収入が安定した頃から孤児院のそばに家を借り、そこで2人で生活していた。

今世まだ若い2人であるが生活スキルはお手のもの。前世の夫婦はこちらでも仲睦まじく暮らしていたらしい。

孤児院にも頻繁に顔を出し、チビ達の世話も焼いている。


「弓だ」


壁に掛けてある弓にアムステルが目を止めた。


「私の弓だよ。最初は何が自分に向いてるのかサッパリだったから、とりあえずゲームの中でメインにしてた武器にしてみたの。リアルで弓を引いたことはなかったから最初こそ酷かったけど、すぐに楽しく使えるようになったよ」

「すごい格好いい」

「何より視力がね、とっても良くて。こう、集中するとフォーカスがバチっと合って凄く気持ちいい!」


うんうんと頷いてくれるアムステルに真昼が楽しそうに語る。

一方、フジヤマはというと。

有難いことに身体は健康で頑丈。戦闘センスも優秀で申し分ないのだが、なんとも物足りない思いを抱えていた。

前世のネットゲーマー時代は生粋のタンクだった。誰よりも前衛に立ち敵の攻撃を一身に受け、耐え続けることにロマンすら感じていた。パーティーメンバーの力量を見極めつつ、狩りのペース配分を調整することが楽しかった。


今世、一応色々と試してみたがやはり盾と剣がしっくりくる。自分に与えられたギフトはタンクにまつわるものなのだろうと思ってはいるが

なんというか派手さに欠ける。いや元来タンクとは地味な仕事を完璧に淡々とこなすことにロマン溢れるわけで、それも重々承知だ。

だが、妖精と会話できる上にホークアイを持つ真昼を隣でずっと見て来て何も思わなかった訳ではなかった。

転生者ってもっとこう、なんか派手な…とは言わないまでも特別な何かが自分にも無いものか…と、ずっと考えていた。

今日になってアムステルと再会し、卵から産まれ…たかった訳ではないが特別にしてもらってる感がすごい。

種族ヴァンパイアとか意味不明だ。こちとら普通に人間(ヒューマン)だ。

おまけに眷属まで見せられた。

なんだそれ超欲しい。

みたいな事は目の前で近況報告に華を咲かせる2人には格好悪くて言うことも出来ず素知らぬ顔をして黙ってお茶を啜るフジヤマなのであった。


***


みなで今までの半生を話し込んでいると気付けばたっぷりと夜が更けていた。アムステルはフジヤマと真昼の家に一泊することとなった。

暦が正しければ3人が15歳となる4月1日は明日。孤児院の院長や冒険者の先輩達によればステータス確認は当日の朝、目覚めてからが確実らしい。

明朝、みなで各々のステータスを確認しそのまま王都に行って転生者鑑定と洒落込もうかと話していた。

この家には寝室などはなく、いわゆる広めのワンルーム。リビングの奥に大きめのベッドを置いている。

一応フジヤマをベッドの傍のソファに。

アムステルと真昼でベッドを使う形とした。これなら3人で話も出来る!と、まだまだ話し足りない真昼は大はしゃぎだ。


「裁縫は?」

「全然」

「数学」

「まったく!」

「じゃぁ、音楽」

「大好きっ!歌うことも好き!ピアノも習ってた」

「ほんじゃ、最初は鼻歌を歌う感覚で。魔法の肝はイメージだから、知ってる曲に創造力を載せていくとやり易い。作曲も出来るならオリジナルの旋律を紡ぐ感覚で行使したい魔法を創造していく」

「なるほど?」


生徒は真昼。先生はアムステル。

2人はベッドに転がりながら話す。ソファに横になりながらフジヤマも聞いていた。

アムステルは産まれてから約15年。オリジナルの魔法式を沢山作ったと言う。それを聞いた真昼は『魔法を教わりたい!』と手を挙げた。

日頃から妖精たちと会話をしていて魔法に大変興味があり、独学で試行錯誤していたが信頼出来る良い先生は冒険者仲間をあたっても見つけられず難航していた。

そもそも冒険者稼業の魔法職にとって魔法とは商売道具そのものであり他人にみすみす教えるようなことは避けられてしまう。

この世界での魔法は、ギフトとして女神から与えられた属性を各自得意とするものの、火をつけたり少量の水を出したりする生活魔法についてはある程度みなが使う事ができる。

が、生活魔法以外の魔法紋や魔法陣、新しい魔法といったものは緻密で繊細な構築が必要な上、個々に差がある魔力量にも関係してくるため誰でもおいそれと出来るものではない。

それでもコツさえ分かれば簡単だとアムステルは言う。


「デカい魔法紋になるとそれこそ集中して

長く詠唱し続けなきゃいけないけど、そこそこのものなら慣れれば無詠唱で生活魔法みたいにイケる」

「うむぅ。簡単に言うなぁ」


口元に手を当て真昼が唸る。


「真昼なら大丈夫だよ。今だって弓に多少の火力は載せてるんでしょ?」

「うん。でも今はそれが精一杯」

「何はなくとも今夜はもう寝て、明日の朝みんなでギフトの確認だな」


フジヤマの言葉に2人も頷き、久しぶりの再会の夜は過ぎたのであった。

ありがとうございます!

まったり更新中!

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