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4-7話 あばよダチ公

スラスターが悲鳴を上げる。

ブライXの装甲が焼けるように熱い。

コンテナ群の間を抜けながら、俺はハルバードを構えた。

レーダーにはたった一つの赤点——ニンテージ。

そこに、カットリがいる。


「カットリ! 聞こえるか! 俺だ、鋼だ!」


「……ハガネ……コロス……タタカイ……ダケ」


通信越しの声は濁っていた。

機械音のようで、感情が死んでる。

だが、その一拍ごとの間に、かすかな“呼吸”がある。

——まだだ、まだカットリは消えてない。


俺は操縦桿を握り締め、スラスターを全開にする。

蒼い残光が尾を引き、ブライXが一気に加速する。

ニンテージも迎撃態勢に入る。

ミサイルポッドが展開され、赤い光が点滅した。


「来いよ……ッ!」


空が裂ける。

ミサイルの群れが雨のように降り注ぐ。


「アイシクルシールド!」


俺はハルバードの冷却機構を最大に解放、氷の障壁を張った。

爆炎が氷に弾け、閃光と煙が入り混じる。

視界の奥、ニンテージが突っ込んできた。


「シネェェ……ハガネェェ……!」


「うるせぇぇぇぇッ!!!」


衝突。

金属が火花を散らす。

刃と刃がぶつかり、スラスターの風圧が鉄骨を吹き飛ばす。

俺は咆哮とともにハルバードを押し込む。

ニンテージがぐらつく。だが、踏みとどまった。

カットリの腕の動きが、生きていた頃と同じだった。

反射的に涙が滲む。


「お前は、まだ……お前なんだろ!?」


「……ワカラナイ……」


その瞬間、わずかに動きが止まった。

迷いのような、苦しみのような。

その一瞬を、俺は逃さなかった。


「悪いな、カットリ……!シャイニングビームχ(カイ)!!」


シャイニングビームが閃光を放つ。

ニンテージの胸部装甲を貫いた。

蒼い光が内部から漏れ出し、爆発が起こる。


「くっ……!!」


爆風で機体が吹き飛ばされる。

ブライXを必死に立て直し、機体をスライドさせて着地。

煙の中で、ニンテージが膝をついていた。

そして、パイロットシートごとコックピットが切り離される。


パラシュートが展開され、コンテナの上に投げ出されたカットリの身体が見えた。

俺はすぐにスラスターを噴かし、着地。

ハッチを開け、ブライXを降りた。

鉄骨を踏みしめ、走る。


「カットリィィィ!!!」


コンテナの前にたどり着くと、そこには血とオイルにまみれたカットリがいた。

左目が赤く点滅し、義肢の部分からは煙が上がっている。

それでも、奴は俺を見て……笑っていた。


「鋼……殿……」


声が震えていた。

だが、あの頃の声だった。


「……解釈を」


息を飲む。

わかっていた。

あいつはもう元には戻らない。

このまま生き延びれば、またあの“洗脳”が始まる。

二度と、自分を取り戻せなくなる。


「……なんでだよ、そんなこと言うなよ……」


「……傷が治れば……また……奴らが拙者を……」


言葉の途中で、カットリの声が途切れる。

それでも、笑っていた。

静かに、穏やかに。


「ああ……わかってるさ」


俺はポーチから、ひとつのリボルバーを取り出した。

銀に鈍く光る、メギの形見の銃。

かつて、勇者を倒した銃。もう一度だけ使わせてもらう


カットリの片目が、その銃を見て、微かに笑う。


「……似合っているでござるよ……鋼殿」


「やめろよ……そんな顔で言うなよ……」


手が震える。

引き金が、やけに重い。

息ができないほど胸が痛い。


「……あばよ、ダチ公(しんゆう)


銃声が、夜を裂いた。

反動で腕が跳ねる。

カットリの身体が、静かに力を失う。

赤い義眼が光を失い、穏やかな顔になる。

その顔は、まるで「やっと帰ってこれた」と言っているようだった。


俺は膝から崩れ落ちた。

リボルバーが手の中で熱を失っていく。


「……くそっ……くそぉぉぉぉ……!」


声にならない叫びが夜に溶けた。

コンテナ群に、ただ風の音だけが残る。

涙で霞んだ視界の向こうに、

カットリの亡骸が、静かに眠っていた。

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