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4-4話 圧倒的な戦力差

カチコミすることを決めた。翌日、作戦は決行された。だがそれは作戦と呼ぶにはお粗末な物。


「突っ込めぇぇぇ!」


簡単に言えば、軍との正面衝突だった。クイーン(化ヶ物の女王)なき今ネメシス(化ヶ物)もいない、皮肉なことに人類は人類同士で戦い合うこととなった。


「これが…戦争、かよ」


そんな中俺たちは違和感を感じた。1秒の隙もなく、統率の取れた軍の連中そこにグラスの通信が入った。


「軍は、一般兵まで洗脳してるのか…!」


グラスは通信機を通して憤りを露わにした。この圧倒的な戦力差は、ただの物量ではない。洗脳によって、恐怖やためらいといった感情を捨て去った兵士たちが、無尽蔵に襲いかかってくるからだ。俺たちは、少数精鋭とはいえ、この物量差を覆すことは不可能だ。


「いったいどうすれば…」


ブライXの操縦桿を強く握りしめる。操縦席の震動が、骨にまで染みてくる。AO越しでも、吐き気がするほどの殺意が四方から感じ取れた。だけど俺は、視線を一点に向けていた。リヒターの声が、耳に届いたからだ。


「鋼、強い反応をひとつ見つけた。通常のAOとは違う波形だ」


「波形?」


「脳波だ。異常に安定している。むしろ“固定”されている感じだな。洗脳の痕跡…おそらく」


言葉の先を、俺が継いだ。


「カットリ、か…」


息が詰まる。胸の奥で何かが軋んだ。リヒターが続ける。


「場所は南東、第17コンテナゾーンだ。だが——」


「行かせてくれ、リヒター」


「……一人でか?」


「俺が、ケリをつけてくる」


俺がやるしか無い。他の誰にもおそらくは出来ないだろう。


「気をつけろ、奴が本当に“奴”じゃなくなっていたとしても、お前はきっと、情を捨てきれん」


その言葉に、俺は答えなかった。答える必要もなかった。ただ、ブライXのスラスターを全開にし、燃える空を割って南東へと突き進んだ。


ーーーーーーーー


第17コンテナゾーンは、戦火を免れた静寂のエリアだった。風が鉄の匂いを運んでくる。そこに、奴はいたそのコックピットから、微かに見えるシルエット。俺はマイクをオンにした。


「カットリ——そこにいるのか」


沈黙。ノイズ。だが、返事が返ってきた。


『……コウ? コウ、ナンデ、ココニ、イタノ?』


……声だ。確かにカットリの声。でも、どこかが違う。発音が、ぎこちない。言葉の間に、機械的な処理のズレを感じる。


『オマエハ、イラナイ。ワタシハ、アタラシイ、ココロニ、ウマレカワッタ』


生まれ変わっただと?


「ふざけるな!」


俺は怒鳴った。胸の中に溜まっていた何かが、言葉となって爆ぜた。


「お前は“そんなやつ”じゃないだろ!カットリ!」


返ってきたのは、冷たい沈黙だった。やがて、ゆっくりと動き出す。その動きには、ためらいが一切なかった。完璧に訓練された兵士のように、寸分のブレもなく、機体が構えを取った。


『シツジョ、ヲ、ミダス、モノ……ハイジョ、スル』


「やめろ…!」


俺の手が震える。だが、それでも操縦桿は離さなかった。


「お前を救う。それが、今やるべきことだ!」


通信が切れた。代わりに、目の前のニンテージ5式がスラスターを吹かして加速してきた。その動きは、かつて何度も見たカットリのそれと、まったく同じだった。いや、まったく同じ、だからこそ。俺は確信した。


「本当に、洗脳されてるんだな……」


リヒターが言ってた、“脳波が固定されてる”ってやつだ。人格が押し潰され、命令だけで動く操り人形。だとしたら、カットリはもう、カットリじゃない。


「だったら、俺が叩き割って目覚まさせる!」


アイシクルハルバードをだす。蒼い光が、唸るように振動した。カットリはらしくもなくグレネードランチャーを構え、こちらに照準を合わせてくる。


視線がぶつかり合う。刹那の沈黙。緊張で心臓が張り裂けそうだった。——次の瞬間、同時にスラスターが火を噴いた。俺は叫んだ。


「カットリィィィィィィィィィィ!!!!!」


そして、交差する二機のAO——戦いの幕が、今、上がる。

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