3−12話 進化の行く末
「あれは……反転の化け物!?」
シャッターの向こうには、まるで眠っているかのように横たわる異形の存在があった。
「いや、少し違うな。反転の奴が王だとすれば、こいつは女王だ。」
「女王?」
ミカンが不思議そうに首を傾げる。俺はあれをみるのは、二度とごめんだったがそれでもを直視せざるおえなかった。
「だけど、あれはもう抜け殻さ。心臓を奪ったからな。」
心臓を奪った……まさか
「そうか、そういうことか!」
俺の頭の中で、一つの推測が確信へと変わった。
「女王を取り込んだから、あんたはネメシスを操れたんだな!」
ハカセはニヤリと笑ったまるで、それが正しいと言うかのように
「さすがに分かるか。抜け殻は天命の時計のエネルギーを補充するための……電池ってところかな?」
「天命の時計?」
博士がくるくると回す金色の懐中時計、それのことか?
「おや?知らなかったのかい、鋼くん?ミスカと一緒にいたのに?」
……ミスカ?
「なんでミスカの名前が出てくるんだ!」
「そうか、あの子話さなかったのか……まいったな……」
ハカセは肩をすくめる。
「簡単に説明しよう。この時計は時空を繋げ、移動するためのものさ。私はこれを使って、地球とこの星を繋げようとしているんだよ。」
地球……今の地球は核と魔法で汚染された死の星だ。
「そんなものと繋げたら、この星は滅ぶぞ!」
「違うね、間違っているよ。核物質には進化の力がある。そうすれば人間は進化できる。」
「お兄ちゃん、本当なの?」
ミカンは心配そうな顔をのぞかせ、そういった。
「んなわけあるか!」
俺は気づけば即答していた。
「確かにそんな話は聞いたことがある。だが!」
一部の人間は確かに進化できるだろうただ。選ばれなければ…
「ほとんどの人間は死ぬんだぞ!わかってんのか!あんただって——」
しかしまともな理屈は通じない。
「私は別に死んでもいいし、あの世で成果を見れるならね?」
「……!」
歯ぎしりをした。狂気的な言葉だが、等の本人は何事もなく至極当たり前な反応を示した。
「おしゃべりはここまでだ。ネメシス達、カモン!」
ハカセの号令と共に、黒光りする獣がうごめき。それらはブライの前で首を座らせ、鋭い眼光を放った。
「来るぞ!」
俺は操縦桿を強く握る。ネメシス達がアイアンカルチェスに絡み合い、変形する。その姿は、ティラノサウルスの頭部をもった二足歩行戦車。
「ここからが本番だよ、鋼くん……アイアンカルチェス・ティラノ!」
ティラノの咆哮が轟く。周囲の金属が共鳴し、空間そのものが震えるほどの威圧感を放っていた。
「行くぞ!」
ブースターが火を噴き、ブライが猛突進する。振り下ろした剣が唸りを上げるが、ティラノの鋼鉄の顎がそれを迎え撃ち、火花を散らした。
「チッ……!」
機体が激しく揺れる。ティラノの腕がブライの胴体に迫る。俺は即座に防御姿勢を取るが、衝撃で機体が吹き飛ばされ、建物の壁を貫いた。
「鋼くん、そんなので勝てると思うかい?」
ハカセの嘲笑が響く。だが、俺はすぐにブライを立ち上がらせた。
「なら、これはどうだ!ブライハルバード!」
アイアンカルチェス・ティラノが咆哮を上げた。その巨体はまるで生きた獣のようにしなやかに動き、ブライに向かって猛然と突進する。
「ミカン、しっかり掴まってろ!」
俺は操縦桿を引き、ブライを跳躍させる。ティラノの巨腕が地を砕きながら振るわれ、俺たちのいた場所に亀裂が走った。
「チッ、避けるか。だがまだまだ!」
ハカセが狂ったように笑いながら、ティラノの口が開き、黒い光が収束し始める。エネルギー弾の発射だ!
「間に合うかよッ!」
俺はブライのシステムを起動し、氷を呼び覚ました。ブライの肩から大量の冷気が生まれ、そこから蒼白い光を放つ氷の刃が現れる
「絶対零度、グレイシャルエイジ!」
瞬時にアイアンカルチェス・ティラノの足元を狙い、ハルバードを叩きつける。地面が瞬時に凍りつき、ティラノの片脚が氷に捕らわれた。
「動きを止めた!」
「なかなかやるね、でも——」
ハカセが操縦桿を操作すると、ティラノの背中からブースターが噴射され、氷を砕いて強引に動きを取り戻した。さらに、ティラノの尾がしなり、ブライへと鋭く振り抜かれる。
「くそっ!」
俺は咄嗟にブライを旋回させるが、衝撃を完全には避けられず、機体が大きく揺れる。
「お兄ちゃん!」
ミカンが心配そうにこちらを見つめていた…危機的状態だが
「大丈夫だ……!」
ティラノが再び飛びかかる。その影がブライを覆うほどの巨躯。
「だが、これで決める!」
俺は操縦桿を強く握りしめ、月光を浴びながらブライのエネルギーを最大出力にする。
「月の光を集めろ……!」
ブライの全身に張り巡らされた氷の結晶が淡く輝き、光を吸収していく。その輝きがハルバードへと収束し、白銀の刃となる。
「ゼロ距離ムーンライトレイ——!」
ハカセの動揺する声が響く。その瞬間、凍てつく月光のエネルギーがティラノの内部で暴発し、装甲を砕きながら機体を貫いた。
「ぐあああああっ!」
ティラノの動きが止まり、その巨体が崩れ落ちる。
「ま、まだだ……まだ……私は……!なっ!?」
ハカセが驚愕する。だが、俺は追撃のタイミングを見定めた。
「これで終わりだ!」
ブライの拳を突き出す。アイアンカルチェス・ティラノの胸部を貫いた。
「が、はっ……!」
操縦席の中で、ハカセが血を吐く。
「フ……フフ……そうか……これが、結末……か……だが……この時計だけは……まだ…使える……」
ティラノが爆発し、ブライが空へと飛び去る。爆炎の中で、ハカセは静かに事切れた。
「終わったのか?」
戦いは、終わった。俺はミカンを見つめ、拳を握りしめる。
「……ミスカはもういない。それでも、話を聞かせてもらうぞ。」
しかし俺は、気づいてはいなかった。時計がカプセルによって脱出していたことを、そしてその時計が、また次の争いの火種になることを
一様殲滅編の、最終話になります。
次回からは天命編が始まります。




