好きな人を王太子妃にする?そんなの無理に決まってるじゃ無いですか?そんな事したら国が滅びるって何故理解できないんですか?
「ミッシェル・ロングトーン、この場でお前とは婚約破棄する!」
その言葉はスリーパー王国、王宮内の謁見の間で国王陛下夫妻が居る場で王太子であるマイルから発せられた。
「アイル殿下、それは本気ですか?」
黒髪で緑の瞳のミッシェルが聞き直した。
「本気に決まっているだろう!俺は王太子妃には愛するカナリアを指名する!すでに父上には了承済みだ!」
「私は10年間王太子妃教育を受けてきました。その一環で外交官に付いて外交もして来ました。果たして教育も受けていないカナリア様に務まるのですか?」
「カナリアは俺の隣で笑って居てくれればそれで良い。女は可愛いが全てだ!」
「アイル様!」
アイルの言葉に喜んだカナリア嬢がアイル殿下の腕に抱きついた。
「殿下のお気持ち良く分かりました。
婚約破棄を受け入れます。
カナリア嬢とお幸せに」
ミッシェルはアイルに礼をして王宮から去ろうとしたが、王妃であるセレナが声を掛けて来た。
「ミッシェル、殿下が婚約解消したけれど、予定通り明日私の実家に帰るときは付き添いをお願いしますね。娘のライラも楽しみにしていますから」
「はい。精一杯務めさせて頂きます」
「早朝迎えに行きます」
「準備をして、お待ちしています」
「陛下、今更予定変更は不可能ですので、ミッシェルを側付として連れて行きます。宜しいですわね?」
「うむ。分かった。ミッシェル、王妃を頼む」
「精一杯務めさせて頂きます。では明日の準備がございますので、失礼致します」
「やっと煩い奴と婚約破棄して、可愛い愛しのカナリアと幸せになれる。
父上、ありがとうございます!カナリア幸せになろうな!」
「はい!アイル様!私頑張ります!!」
アイル殿下とカナリア嬢はこの先の自分達の未来を想像し、幸せの絶頂だった。
♢♢♢♢♢♢♢
翌日隣国の実家に顔出しの為帰る王妃が娘のライラと共にロングトーン家に迎えに来た。荷物を纏めて待っていたミッシェルは馬車に乗り込んだ。
「昨夜はごめんなさいね。やはり貴方も同じ目に遭ってしまいましたね。ごめんなさいね」
王妃様がミッシェルに謝って来た。
「昔陛下も王太子時代、私に婚約破棄を突きつけたのよ。私の時は当時の国王陛下と王妃様、そして宰相が納得せず、私を後に王妃にし、恋人を側妃にしました。
私は女の子のライラしか授からなかった為、側妃の子のアイルが王太子になりましたが、陛下も王太子もよく似てますもの。きっと同じ事が起こると思っていたのよ。今はもう前国王夫妻も前宰相もお亡くなりになり、あの方達を諫める者も居ないからきっと婚約破棄は成立すると思っていたわ」
「王妃様には感謝しています。やっと新しい自分の人生を歩めますから」
「あの親にしてあの子ありよね…。
自分を褒めてくれる、自分よりお馬鹿な守ってあげたい女が好みなんだから……」
王妃はポツリと呟いていた。
馬車に乗り3日後の午後王妃様のご実家のあるスバル王国の王宮に到着した。
「セレナ叔母上!お待ちしていました!」
「アラミス、出迎えありがとう」
セレナ達を出迎えたのはセレナの甥でスバル王国の現国王のアラミスだった。前国王のアラミスの父は3年前に亡くなっていたが、いつも妹セレナの心配をしていた。
「いままで苦労された分、これからはスバル王国でライラとゆっくり暮らしてください。全て整えてありますから」
「アラミス、ありがとう」
「アラミスお兄様、これからよろしくお願い致します!」
「ライラ、あいつが首を長くして待っていたぞ」
アラミスの視線の先にはこの国の宰相の息子がライラを熱い眼差しで見つめていた。ライラも同じように見つめ、近づいていき、手を取り合った。愛を誓い合っている2人は近い未来結婚する事になる。
「ミッシェル!会えるのを待っていたよ!!」
「アラミス様、お待たせ致しました。明後日には一族皆スバル王国へ到着します。一族共々よろしくお願い致します」
「それにしても、スリーパー王国の国王も王太子もミッシェルやロングトーン家の価値を全く分かってないとは、無能ばかりだな」
アラミスの言うように、ミッシェルは外交官と他国に外交で交渉などする際、素晴らしい交渉術で行く先々の王族や高位貴族からも嫁いで来ないかと打診をされていた。ロングトーン家の一族は皆優秀な者が多く、数代前から一族ごと移り住まないかと誘われていた。
結果ミッシェルはアラミスを選び一族はスバル王国を選んだ。
国王と王太子の無能ぶりに近い未来に王家は滅ぶと予測したからだった。
ミッシェル自身アラミスと出会い粗暴なアイルと違い、自分を愛し、大事にしてくれるアラミスを愛していた。それでも王族に自身から婚約破棄を告げる訳にはいかず、アイルからの婚約破棄を待っていたのだった。王宮での婚約破棄は待っていた瞬間だった。
王国に嫁いで19年の王妃もとうとう娘のライラと共に王家を捨てて実家であるスバル王国に帰った。もちろん二度とスリーパー王国に帰るつもりはない。
国王はまだ知らないが、側妃に王妃の座をチラつかせ、国王に離縁届けにサインをさせ、教会には届け離縁済みだった。
国王は昔から書類の中身は見ないでサインだけする人だったので、簡単だった。19年の月日我慢していたが、愛娘のライラを側妃の贅沢の為に成金の年寄りに嫁がせようとしている事を知り、全てを捨てる事にした。
後に国王は王妃との離縁を知り、怒るどころか喜び、愛する側妃を王妃にした。
アイル王太子もカナリアを王太子妃にし、贅沢三昧に暮らしていた。
結果、財政は破綻し、国民に重税を課しても贅沢をしていた為、とうとう謀反が起こり王族達は投獄や処刑された。
スリーパー王国は周辺の国に分けて統治される事になった。
国を統べる者は自身の満足より国、国民の事を考えて生きてこその王族なのだとその後の悪い見本として受け継がれた。
この作品を読んで頂きありがとうございます。
まだまだ拙い作品ですが、評価頂けたら今後の励みになるので、よろしくお願い致します!