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9エルフもグイグイ追って来るんだが?

一方、時は遡り、王都のベルナドッテ家にて、アルが実家を追放されたことで、心を痛めている女の子がいた。


彼女は辺境の領地で、アルの世話係をしており、アルに懐いていた。いや、恋していた。


辺境からアルの世話係として同行した彼女はアルが追放されてしまい、どうしていいのか分からない状況で。


「エルフの奴隷風情が何をもたもたと! さっさと食事の用意をなさい!!」


冷たい声で、エルフで亜人の奴隷をぞんざいに扱うアルの母親――。


自身は豪奢なソファーでくつろぎ、扇を仰ぎながら、横柄に命令をしていた。


「は、はいっ! 奥様!」


「返事だけは立派ね。だけどいい返事をするより、言われる前にさっさとやっておきなさい! あなたの食事は必要ありませんからね!」


そう言って、口角を歪ませる。食事の準備はさせて、彼女には何も食べさせないつもりだ。


「全く、あの落ちこぼれの駄目息子はとんだ置き土産をしてくれたわ。亜人の奴隷なんて、どうすればいいのかしら? 領地に送り返すにしても、馬車代が勿体無いわ」


「お、奥様! アルベルト様は立派な方です! 駄目な息子さんなんかじゃありません!」

つい、彼女は言ってしまった。敬愛する、いや恋しているアルのことを悪く言われて、つい、身分不相応な発言を。


アルの母親は、立ち上がり、リーゼの近くに歩いて来ると。


パシン――


と。


大きな音が、部屋全体に響きわたった。


「も、申し訳ございません……!」


リーゼが慌てて謝罪する。貴族の主人相手にして良い発言ではなかった。


エルフの女の子の奴隷、リーゼ。


昨年の飢饉で、売りに出されていたリーゼをアルや執事長のエーリヒが気の毒に思い、購入してアルの世話係にしていた。法律上、奴隷ではあるが、アルやエーリヒは普通の使用人として接していた。


リーゼは生まれて初めて、奴隷への扱いが普通どんなものなのかがわかった。


『私は恵まれすぎていたんだ。そして、アル様がどんなに素晴らしい人なのかも』


そう思い、アルへの想いを更に募らせていた。


だが、とりあえず、さっさと起きあがって、仕事に戻る。


モタモタしていたら、また平手打ちされるから。


アルがハズレスキル持ちと判明して、リーゼはアルに声をかけられないでいた。


その気持ちはリーゼにはよく理解できたのだ。


何故なら彼女もハズレスキルの持ちだから。ハズレスキルだったから、飢饉の際、真っ先に奴隷として売り飛ばされた。


どう慰めればいいか分からず、その上、そのままアルがこの家を追放されてしまった。


辺境の領地ではみなアルを慕い、仲良くやっていたので、信じられない所業だった。


『実の家族なのに』


リーゼはハズレスキル持ちだから奴隷として売り飛ばされたが、家族には愛されてはいた。


ただ、誰か食いぶちが減らないと、家族全員が餓死する。


リーゼが奴隷商に引き渡される時、母親は泣き崩れ、父親も泣いていて、兄や妹も。


なのにこの家の人達は。


『なんで、さっさとこの家を逃げ出してアル様についていかなかったのか?』


悔やまれる。まさか、ハズレスキルだからといって、家を追い出されるとは思っていなかったリーゼは自身の判断の甘さを後悔した。

しかし。


『いや、いまからでも遅くはない。今からでも逃げ出して、どうにかしてアル様に会いたい』


そして、その日の夜、リーゼは密かにベルナドッテ家を出奔した。


世の中には奴隷狩りというものが存在して、自身が危険な低い身分だということも知らずに。

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支援職、最強になる~パーティを追放された俺、微妙なハズレスキルと異世界図書館を組み合わせたらえらいことになった。は? 今更戻って来い? 何言ってんだこいつ?~
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