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40あれ? 賢者が弱すぎるんだが?

「うぽうぽうぽうぽうぽうぽぽぽぽぽぽ……!」


空を飛ぶ親父はせっかくの経験を堪能せず、情けない悲鳴とともに落下して来た。


ドカンッ!!


地面に落ちて、やはり大きな穴を大の字に作り、兄のエリアスより深い穴に落ち込んでいた。


死んでたら、さすがにちょっとな。嫌いでも、実の父親、さすがに気分が悪い。


だが。


さすがに賢者の称号を持つ男。

兄のエリアスやゲリンとは違っていた。


「ぐ……ゆ、油断した……!」


親父はしぶとかった。穴をジリジリと上がってくる。


貞子みたいで怖いんだが。


そうか、親父は光魔法、治癒魔法が使える。詠唱破棄か無詠唱でとっさに治癒して、意外とダメージはないのだろう。 


だが、親父は激怒していた。


「ふ、ふざけるでない! なんだいまの外道の魔法は?」


いや、ただのスキルだ。身体強化(中)だけど。それに外道ってちょっと酷くないか?


「燃え盛る火はその真価を我が身に示せ……」


俺はこのチャンスに呪文詠唱していた。親父の呪文詠唱が間に合わなければ、効果がある筈。


「『炎の祝福【ファイヤ・ブレイズ 】』!! 」


俺の放った火の魔法を宿した光球が親父に向かって吸い込まれる、かに見えた。


「『氷晶の刑戮【ネーレーイデス・ブリリアント……!?】』」


親父が詠唱破棄で神級の氷属性の光球を打ち出してきた。


魔法と魔法がぶつかり合う。当然、弱いほうが圧し負ける。


神級の氷魔法。魔法には属性というものがあり、有利、不利が存在する。


俺の火魔法は氷や水魔法に弱い。おおよそ半分の力で相殺される。


俺の上級魔法は神級並みだ。だが、属性の相性が悪すぎた。故に圧される。


俺の火魔法は弾かれて、親父の氷魔法が俺の近くに着弾する。


「残念だったな! 外道の魔法さえ使わなければ、私の敵ではない!」


「それはどうかな? 親父は全く魔法のことがわかっていないな」


「何?」


ブラフではない。親父は魔法のことなんて全然わかっていない。


ただ、魔力に恵まれ、スキルに恵まれただけ。そこに努力や進化はなかった。


だから。


「親父、バカの一つ覚えの神級魔法に上級魔法だけで勝ってやろう」


「気でも触れたか? 私が魔法のことをわかっていないだと? 上級魔法だけで私の神級魔法を凌駕すると? 戯けたことを言うでない。天地がひっくり返ってもありえん」


「なら、天地をひっくり返してやろう。上級魔法でな」


「……笑止」


まずは火の魔法で親父の氷魔法を上回るか。


俺は一節の火の上級魔法を唱えた。土魔法を付与して。


「燃え盛る火はその真価を我が身に示し…… 喜びの声を持って女神の鉾となれ」


火魔法の光球が親父に向かって行く。


「無駄無駄無駄無駄ぁ!!」


しかし、親父の放った光球はあっさり俺の魔法の光球に掻き消される。


「な! ば、馬鹿な!」


「親父、あんたは何も学んでないな。恵まれ過ぎていたんだよ。不自由がないから、進化がない。あんたのは神に見放されたハズレスキルなんだよ!」


親父の顔が羞恥で引き攣る。俺の魔法が本当にただの上級魔法なことが理解出来るが故に。


「どうせ、卑怯な魔道具か何かの力を借りたんだろう。私の神級の氷魔法の最終形を見せてやろう。お前は見たことがないだろう。冥土の土産に見せてやる。それがせめてもの親心だ。彼我の差を思い知れ!」


「なら、俺はあんたの神級氷魔法を上級魔法だけで超えてやろう。死んでも恨むなよ」


「まったく、真の強者がわからんと見える」


まあ、そうだな。親父は確かに強い。確かにな。それは確かなことだ。


だが、進化の止まった者を抜き去るのは容易い。

俺は親父の魔法を上級魔法で手本を見せてやることにした。


真の光と水魔法の在り方を。それを親父に教えてやろう。スキルに恵まれなかったからこそ考えることができる境地。クリスもリーゼも冒険者のみなもそうだった。


だから、親父にわからせる必要がある。自分たちがどれだけ怠惰だったのかを。


「光あれ 、地は混沌であって、闇が深淵の面にあり……水によって生まれる」


「神が心を尽くして神を愛する時 過去の罪は赦され……水によって生まれる」


最後の一節が全く同じ魔法。だが俺のは上級魔法をアレンジしたもの、親父のは神級魔法。


今の俺には神級魔法を解き明かすほどの知識も経験も足りない。


だが、既に上級魔法は解き明かした。親父の光魔法。親父は治癒魔法としか使っていない。だが、俺は攻撃魔法として、エネルギーをもつ光子に水魔法を付与した。これで、水と光で水素を作る、そして水素を僅かな火の力で爆発させると、その威力は。


「『氷晶の刑戮【ネーレーイデス・ブリリアント……!?】』」


親父の魔法が先に完成し、光球が俺に向かって放たれる。


それを迎撃する俺の魔法。


「どうだ落ちこぼれ!! お前には防御だけで精一杯だろう!」


「いや……これくらい……たいしたことないが」


俺は魔法の光球の一つを1/10にして迎撃していた。


「親父、それがお前の全力なのか? 遠慮なく打ち込んでいいぞ」


「は?」


いくらなんでも親父の真の氷の神級魔法とは思えなかった。


「ふっ……まだはったりをかます余裕があるか。そこまで言うなら、本気でやろう!」


「ネーレーイデス・ブリリアント!!」」


それまでより大きな光球が俺に向かって突き進む。


ようやく本気を出したか、ならばこっちも。


「燃え盛れ水の火よ! 【ハイドロ・エクスプロージョン!!】」


俺の魔法の光球は真っすぐ親父の光球を迎撃……する筈だった。


あれ?


なんか、親父の魔法を吸収したような。


迎撃のため、やや上方に打ち出された魔法は親父を吹っ飛ばして、見当ハズレの近くの山に着弾する。


「あ……」


「……シーン」


突然、観客たちが静まり変える。何故なら。


親父は例のごとく、空高く、クルクル空を飛んでいる。


そして、地響きを上げて、一つの山が大爆発を起こしていた。いや、俺の魔法があたったのだ。


火山のように大爆発を起こし、黒煙を吐きだし、山の三分目あたりが空に飛んでいる。


観客たちは遠く見える大爆発を起こして飛んでいる山を見て、あれだけ熱烈な応援をしていたにも関わらず、シンと静まり返った。そして――気が付き始める。


「お……おい、なんか今、魔法で山一つ吹き飛ばしてなかったか?」


「もしかしてあの賢者って、めちゃくちゃ弱いんじゃねえ?」


「い、いや。俺には相手のハズレスキル、アルがでたらめに強すぎるだけに思える」


「マ……マジかお前、本気で言ってんのかよ……相手は賢者だぞ?」


そして、親父が空をクルクルと周りながら、ドスンと落ちる。


親父は後ろの山が落ちて来て、山が天地逆さになっているのを見て、半泣きだった。


だが、勘違いをしてもらっては困る。


「親父、勘違いするな。今のは魔法の当たり所が良かっただけだ」


「「「「「「「「「「「「「どんな当たり所だよ」」」」」」」」」」」」」

何故か見物客数万人に突っ込まれる。


「「「「「「「「「「「「「ほんとに天地を逆さにするな!!」」」」」」」」」」


更に追い打ち。

連載のモチベーションにつながるので、面白いと思って頂いたら、作品のページの下の方の☆の評価をお願いいたします。ぺこり (__)

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