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3/6

校長室から侵入させられた

3話から読む方のためにキャラ説明


柚木 千景:クール系男子。この作品の主人公。

     かなり目つきが悪いせいで基本ぼっち。


新咲 弥生:人の言うこと聞かないが、コミュ力はある。

     オカルト好き。座敷童みたいな見た目。

     七不思議も大好きで千景を引っ張ってきた。


佐々木 彰:お調子者男子。背がちっちゃい。

     泣き虫だがカッコつけたいお年頃。

     怖いのも嫌いだが……。

「じゃあ2人とも! 校長室側に忍び込むよー‼︎」

「いやオレ、まだ行くとは言ってない……」

「ここまで来といて何言ってんだよ! ほら行くぞ柚木!」


 渋ってはみるが、背中から体当たりされるように佐々木に押される。いくらオレの方が大きくても、高校男子に全力で押されたら動く。


「佐々木、こういうの苦手なくせに……」

「おまっ、黙ってろよそれ! 新咲さんにバレたら恥ずかしいだろっ‼︎」


 小声で言ったのに、ばっと口を押さえられる。……まぁ大抵の女子にはバレそうだけど、弥生はノー天気なので別かもしれない。


「俺はこれを越えて、強い男になるんだ……!」

「ただの不法侵入だけどな」


 強い意志のこもった表情に、振り向いてそう返せば睨まれた。全然怖くないけど。


 なるほど。

 それもついてきた理由だったのか。

 別に怖がりでもいいと思うけどなぁ。



「ちょっと2人ともー! 何やってんの! 早く上っちゃってー‼︎」



 フェンスの向こう側から、弥生が手を振っている。いつの間にか上って中に入ったらしい。田舎なので入りたい放題だ。


「あ、ごめんね新咲さん! ……ほら早く行くぞ!」


 返事をした佐々木が、オレが動かないのでまたフェンスに向かって背中を押し始める。


「……佐々木」

「なんだよっ⁉︎」

「弥生のこと、名前で呼ばないの? だからモテないんだぞ」


 そう言った途端、背中をバンッと押された。危うくフェンスにぶつかりそうになり、手を前に出してなんとか体勢を保った。


 ガシャンッと大きな音が鳴り響く。



「そんな軽々しく下の名前が呼べるかぁっ‼︎」



 振り向いたら肩で息をして、顔を赤くしている。古風か。


「わわ、大丈夫ー⁉︎ もうっ! 千景が自分で動かないから、彰くん怒っちゃったじゃないの!」

「……お前は耳も飾りらしい」

「なんですって⁉︎」


 フェンス越しに掴み掛かろうとしてくるが、当然できない。なんで佐々木のセリフは聞いてなくて、オレの話は別なのか。


 あわてた佐々木が止めに来たので、そのまま仕方なくフェンスを上 (らされ)る。



「それじゃあ校長室にレッツゴー!」

「こんなテンション高く忍び込むやつがあるか……」



 腕を上げて宣言して、ぐいぐい前を歩いていく。もうこっちの言葉は聞いてないらしい。都合の良い耳だなぁまったく。


「柚木……」


 佐々木が人差し指でちょいちょいと腕を突いてきたので、そちらを向くと少ししょげていた。


「あの……ごめんな? 痛かったか?」

「え? どれの話?」

「どれって言うか、さっきのフェンス……」

「いや大したことなかったから」


 なんだそんな事を気にしてたのか。


 言いづらそうに言うから、なんなのかと思ったら。小心者の佐々木は、自分がやったくせに気になったらしい。


 サラッとそう言ってのければ、今度はなんとも言えないーー強いて言うならキラキラした目を向けてくる。


「お前……カッコいいな!」

「はい?」

「デリカシーはないけど、柚木のそういうところはやっぱモテるやつって感じだ……! 俺、柚木みたいになりたい!」


 謎のキラキラした視線に、居心地が悪くなって視線を逸らした。


 うん、こういうやつだよ佐々木は……。


 そもそも話しかけてきたのも、俺がモテそうだからとかいう話だった気がする。モテるやつは、友達もいるんだよなぁ……。


 そういう観察眼がないから。

 佐々木はモテない。

 そういう事だ。


「なんでオレの周りのやつ、思い込み激しいのばっかりなんだ……」

「ん? なんか言ったか?」

「いやなんでも……」


 「なんだよー」と口を尖らせる佐々木を無視して、少し遠くなった弥生の背を追いかける。



「たしかこの辺り……あっビンゴー!」



 弥生は校長室の端にある窓をガタガタし始めた……と思ったら、ガラッと窓が開いてしまう。この学校、セキュリティガバガバだな。


「なんで開くの……」

「ふふん! こういうのは下調べが大事なのよ、し・た・し・ら・べ‼︎ 弥生様に感謝しなさいっ!」

「いやそこは褒めてない……」


 腰に手を当てふんぞり返る弥生に呆れて返すが、当然聞いちゃいない。


「へー、校長が窓ぶっ壊したって話、マジだったんだ」


 弥生を無視するというある意味図太い神経の佐々木は、開いた窓を見てそんな感想を漏らす。


「え、何? 佐々木知ってたの?」

「知ってたっつーか。噂で? なんでも弁償になるっていうんで校長は隠してるから、先生たちは知らないんだってさ」

「見回りあるだろ……」

「んなもん、校長が『見た』って言えば済むんじゃね? 自分で校長室の鍵閉めちゃえばそれまでだし」


 そんなものなのかねぇ?


 でも実際、不用心にもこの窓が開いていたのは確かだ。しかしどうやったら鍵なんて壊れるんだか。


「よっと! ほらほら2人とも! 入って入って‼︎」


 片手を窓について、華麗に飛び越えた弥生が手招きする。


「いや入ったら、ブザーとか鳴るんじゃ……」

「大丈夫だよぉ! ここの警備、ドアにしかついてないから! ドア開けなきゃ鳴らないらしいよ‼︎」

「……不用心だなぁ」


 再度同じ感想が、今度は口から漏れた。まぁ家とか未だに夜以外鍵かけないから、セキュリティあるだけまだマシなのか……?


「ま、金目のもんなんてこのおんぼろ校にはないだろうしなぁ……っと! ほら柚木も早くしろよ!」


 運動神経は良い佐々木(わんこ)も、軽々と窓を通り抜けた。こちらを向いて、声をかけてくる。


「はぁ……オレ運動できないんだけど」


 仕方がないのでゆっくりと。足を上げて、窓を跨いで入る……が。



「はぁ⁉︎ お前跨ぐだけで入れるとかどうなってんの⁉︎ 脚長すぎかよ⁉︎」

「また伸びたのか……私は伸びないというのに……‼︎」



 運動神経がないから跨いだだけなのに、何故か嫉妬の炎を向けられた。なんでだよ。


「あの……2人ともオレの話聞いてた……?」

「むーかーつーくー! 身長高いの見せつけてくれちゃってー! さては私の栄養奪ったのね⁉︎」

「これだからイケメンは……! やっぱりイケメンに必要なのは身長なのかよ……‼︎」



 うん、全然聞いてないわ。



 ぎりぎりと歯を軋ませる2人に、こちらの言葉は届かないらしい。


 弥生より大きいのは、性別的にわりと普通な事だし。たしかに弥生のほうが小学生まで少し高かったけど、男子は伸びるもんだ。


 あと佐々木の発言に限っては、ほぼ関係ない。佐々木よ、それはお前の誇大妄想でしかない。イケメンなら友達いると思うよ?

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