表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/6

お守りをしに連れて行かれる

 まー佐々木の言う通り。

 怖がられて人寄ってこないんだけど。

 そのせいでほぼぼっちなんだけど?


 弥生や佐々木は、オレに話しかけてくるくらい社交的だから他に友達がいる。



 なので基本、オレは1人ですけどね。



「オレはそこに憧れて声をかけたんだぞ!」

「もう一回殴る?」

「やめろよー! 俺たち友達だろー⁉︎ 俺を殺したら、柚木は友達いなくなるぞっ⁉︎」


 握り拳を作ってみせれば、ひーひー言いながら頭をガードされた。


 そう。残念ながら佐々木は高校でできた、数少ない友達だ。距離感おかしいせいでたまに忘れるけど。


 あとひとつ言いたいのは、別にオレ殺す気はないんだけどなって事だけど。


「オレを殺人鬼扱いにするなよ」

「だってその目は人を何人か殺してる目だぞ!」

「一度失礼という言葉を辞書で引きなよ」

「バカだなぁ。辞書なんて重いモン、持ってるわけないだろー!」


 ぱしぱしと肩を叩かれて笑われるが、だからお前はバカっぽくて女子にモテないんだと思うよ。顔は可愛い系で通るはずなのに。


 そう憐れみの目を向けていたら、「? なんだよ?」とわかってない顔で首を傾げられた。



 ガラガラと扉が開く音共に、担任が入ってきてそれはそこで終わった。



 が。



「と、いうわけでぇ! ここに捜索隊を結成しまーす‼︎」

「いぇーい‼︎ ……ほら! お前も盛り上げろよ‼︎」

「……いや、なんでオレまで……」



 夜。


 しんと静まり返った暗闇は、街灯だけがぽつぽつと光り虫が(たか)る。蒸し暑い熱気が、アスファルトの焼けた匂いを放っている。


 田舎なこともあり、遠くに家々の明かりは見えるがひとっこひとり通らない。



 テンションの高い2人は、人がいない事をいいことに大変盛り上がっていた。




「いやー! 今回の情報はマジだって言ったじゃん! 高校で行方不明になったっていう話なんだよ⁉︎ これは絶対、七不思議のせいだよー‼︎」

「だから何故、高校に忍び込もうという発想になる……」


 セーラー服から打って変わり。ショートパンツにTシャツとなったラフなすがたの弥生はガッツポーズを決める。


 灯らせていない懐中電灯を振っている姿に、大きなため息を吐いた。すると、横から小突かれる。


「おい柚木、そんなつまんなさそうにすんなよ……!」


 何故かこそこそっと話しかけてくる。


 こちらを見上げる、忍び込む気ゼロとしか思えない白T姿の毛玉に目を向ける。学ランの方がまだ目立たないぞ。


「女の子にそんな態度とっちゃダメだぞ!」

「いや、弥生は……というか、なんで佐々木もいるの?」

「なんでって言うなよ! そんなの誘われた場にいたからだろ⁉︎」


 もう小声はいいのか。合わせて一応小声にしていたのに、本人は腕を振って抗議してくる。


「そうだよー! 友達を大事にしなきゃダメでしょ千景! 私が誘った場にいたのだから、参加する義務は佐々木くんにもあるんだよっ!」

「あ、義務だったんだ……?」


 言われた佐々木は戸惑っている。

 明らかに初耳の様子だ。

 そりゃそうだ。弥生ルールだから。


「そうだよ佐々木くん! 佐々木くんと私は、千景と仲良くしてあげよう同盟でしょ⁉︎」

「いつから作られたのその同盟は……」


 佐々木に詰め寄る弥生に、今度はオレがツッコんだ。流石に佐々木が可哀想だ。


「というか、その場に居ただけの人間を巻き込むなよ」

「えー⁉︎ だって、捜索には人が必要なんだよっ⁉︎」

「それが本当かなんて、わかんないでしょ」

「何おーう⁉︎」


 今度はこっちに詰め寄る弥生に、逃げずに睨み返す。


 放課後、佐々木と話しているところを弥生に捕まったのだ。懲りない弥生は、オレたちに向かってこう言ったのだ。




『行方不明の子、探しに行こうよ!』




 いなくなったというのは、オレたちの隣のクラス1年2組の女子生徒。


 忘れ物を取りに行くと言ったきり、帰らなかったらしい。その話は担任もしており、今日なんか早く帰らされたくらいだ。


 どうもその子は弥生と同じように、七不思議に執着していたらしく……。


 実はその子に限らず、ここ最近この学校の生徒が消えているらしい。本当かは知らないけど。


 でも田舎というのは、ある意味みんな顔見知りみたいなもんなので……なかなか人はいなくならない。多分、都会ほどは。




 まぁ学内では。

 「学校の怪談のせいだよ」と。

 そう言われている……と弥生は言う。




 オレは聞いたことないけどねその話。誰が言い出したんだか。まぁ友達いないからって言われたら、反論できないですが?



 しかしそれをわざわざ夜中に、家を抜け出してまで戻って……。



 悪ノリにしても、学校に忍び込むのはノーリスクじゃないのだ。人のこと考えろ。オレはともかく、佐々木は意外と真面目なのになぁ。



 白い肌に大きな目は暗く。

 ただでさえ黒い瞳は、瞳孔が開いて真っ黒。



 弥生が座敷童だと言われた方が、こんな話より納得がいく。



「ま、まぁまぁ! 俺も怪談とか興味あったんだって! ……今更仲間外れにはしないだろ?」



 笑いながら止めに入ってきた割に、語尾が小さく目が泳ぐ佐々木。……やっぱり。



「お前、怖いんじゃ……」

「ち、違うからなっ⁉︎ もー楽しみで武者震いしてるだけだからなっ⁉︎ だから1人で、帰れとか言うなよっ⁉︎」

「やめろシャツを掴むな伸びる」

「伸ばされたくなかったら言うなよ⁉︎」


 掴んで迫ってくるそれは、必死の懇願だった。ぎりぎりと服を掴む手は少し震えて、釣り上げられた目はなんというか潤んでいる。


 お前また泣いてないか……?


 なんで怖がりのくせに、こんな夜の学校とか来たんだ。付き合いがいいと言うか、あの場で断ってもよかったのに……。


「そうだよねぇ! 楽しみで震えちゃうのわかるよー‼︎」


 空気の読めない弥生は、佐々木の言葉に気分が良くなったようだ。にこにこと、ご機嫌にそんな事を言う。


 よく見ろ。

 その目は節穴か?

 どう見てもわんこが震えてるだけだぞ。


「そ、そうだよね新咲さん!」

「弥生でいいよー! 私も(あきら)くんって呼んじゃおうかなー?」

「! これはラブコメの波動……⁉︎」


 アホな佐々木は、ラブコメの波動とやらで震えが収まったらしい。そんなだからモテないんだぞ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ