サルも木からおちる
ピョーンとおうちをとびだしました!
「レヴェリィ! お弁当忘れてるわよ!」
レヴェリィはわたしのなまえです!
ポカポカとしたひざしをさえぎって わたしはきょうもあのヒトのところにいきます
ワタリドリさん達も手伝ってくれて大空をおおう
でも一羽のトリさんは まだとべないんだぁ
河原のすみにうずくまっている羽のないおおきなトリさんは
おサルさんにしゅうりされているの
「また来たのか? 邪魔だ」
ざんねんなことに言葉がつうじましぇん!
人のいいレヴェリィとママはこのヒトにエサをめぐんでおります
「一人じゃぁまだまだかかるなぁ………」
このおサルさんは人としゃべらないのに ひとりごとはしょっちゅうです
川でみずあびするときに見ましたが ぜんしん毛むくじゃら
まんまおサルさんで危ないと言われますが きがいはありません
「………………」
ごりっぷくです
エサを食べているときにわたしがそばにいると とてもふきげんです
そんなときでも たまにひとりごとは言います
「俺は戦場にいた筈なのに ドラゴン・トライアングルでどこか異世界にきちまった」
ドラゴン・トライアングルとは何なのでしょうか?
それしか聞きとれないんですがね
そんなおサルさんは わたしにつうじるとでもおもったのか いきおいで
「あぁ…… でぃすいづ…… あなざぁわるど?」
あなざわるど?
ふむふむ…… 何を言ってんだろう このサル
日がくれたのでそろそろ帰ります
おサルさんはほうちします 暗くなってもしゅうりしてるので
どうせおうちに呼んでもこないし
つぎのひ!
おサルさんがもう一匹ふえました
「おまえさぁぁん!! 元気だったかい?!」
「うるせぇなこの猿!!」
おサルさんよりお猿さんなのがあらわれました
「何だいこの子は?!」
「知らねぇ…… 零戦を元通りにすっから手伝え!」
れいせん?
「レイセンってなぁに?」
わたしは聞いてみました そしたら
「おい零戦に興味あるみたいだぞ! この船はなぁ!」
「おいやめろ!!!」
かんじわるいおサルさんはおしゃべりが嫌いのようです
ちがうおサルさんのジェスチャーでなんとかわかりました
「すごーい ゼロファイター!!」
わたしがよろこぶと元気なおサルさんもよろこんでくれます
だけど絡みづらいおサルさんの顔はいままでにないくらい こわいものでした
みっかめ!!
きょうはレヴェリィの町ではお祭りがあります!!
元気なおサルさんはきてくれるとおもうので声をかけました
「行くな猿!」
「えぇ~~ いいじゃない!! おまえさんも行こうよ!!」
「チッ! 置かれている状況を理解しろって言ってんだ!!」
ケンカしています わたしはしばらく見ていました
「ここはな……… っ………!」
いかついおサルさんがわたしを見ると きゅうに声が小さくなります
「アメリカかもしれねぇんだぞ?」
「へぇ~~ じゃぁおいら達は死んだも同然だな!」
お! 元気なおサルさんがいかついおサルさんをひっぱって まちのほうへとあるいていきました!
山を下りた町はもうお祭りさわぎでした
しかし二匹のサルを見るのはじめてでして
「なんで猿がいるんだぁ!!?」
「しかもなんてデカさだ!?」
すぐにマタギがじゅうをかまえておいでです
「ほら行くぞ! 猿!」
山に帰ろうとしています これでよかったのでは
だけどわたしはそうはさせませんでした
二匹をひきとめて みんなをせっとくしました
なんやかんやでなっとくしてもらい ようやくおまちかねのドンチャンさわぎです
元気なおサルさんはちゅうしんで楽しくおどっています
しかし…… いかついおサルさんは……
「楽しくないの?」
「……………」
言葉がつうじないから しかたないけども
「機体を直して…… そしたら国に帰れるのか? いや…… ここが本当に欧米なら」
「おサルさん!」
わたしにはんのうを見せてくれた 今がチャンス!!
「これね! わたしのママが焼いてくれたの!」
チェリーパイを受け取ってもらいました
なんだかわかんないけど 泣きながら食べています
「おまえさんノってるかい?!!」
「…………うるせぇよ!!」
「ナッハッハッハ!!!!」
いかついおサルさんはあんしんのえみを見せくれました
元気なおサルさんとは 仲がわるいわけではないようですね
そして一年後!!!
おサルさんたちとトリさんがとびたちます!!
「いんやぁ世話になりあんしたぁ!!」
「………なりました」
あいかわらずなにを言っているのかわかりません
わかりませんが さみしいです
「おサルさん達はどこからきたの?」
聞いても意味ないけど 聞きたくてしかたない
「おぉ! おいらの名前かい?! 俺はトベミライ!!」
「通じねぇんだから意味ねぇだろ?」
「世話になったんだし名乗っとけよ トウキチ!!」
「フン……」
おいてけぼり そう感じたのはわたしだけだったのかな
「おなまえはなんですか?!」
「ヤマトの国だぁ!! ナッハッハーハ!」
「その辺にしとけ!!」
「どこからきたのぉぉぉぉ?!!」
「…………うん! じゃぁ帰ろうかトウキチ」
「…………早く乗れ」
耳をふさいじゃうくらいのエンジンのおと プロペラが回って
トリさんのような乗りものだとわかるだけで もう会えないことがわかっていた
「敵地に墜落したのに まさか修繕して飛び立てる日が来るとはな」
「おいらのお陰だね!!」
「そうだな」
「……………お前さぁぁぁん!!!!」
「エンジンよりうるせっ!! 何だよ!!!?」
「楽しかったかい?!」
「…………あぁ!! お前が来てくれたからな!!」
青空を愉快に飛び回るおサルさん達を見て思いました 空は天国だと
あのヒト達はどこから落ちてきたのでしょうか?
そしてあんな笑みを浮かべてどこへ飛んでいくのでしょうか?
とても楽しそうですね
私たちはただ かれらの旅をながめているだけでした
ここはニライカナイとは似て非なる奇跡の異界