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もう異世界転移したわ・・・内定承諾したっけな



―― ここはどこだ?


 灰色の壁。灰色のベッド。青く光る何かの機器。

 そして白衣のようなものを身にまとった男たち。


 その真ん中に寝かされているのは・・・誰だ?


―― これは夢?


「やっほー。どう?」


声が聞こえる。頭に響く。


「・・・しました。これで彼が第2世代の最後の1人となりました。」


「しかし・・(雑音)・・の反応は出ました。間違いなく彼は使えます。」



 今度はしっかりと聞き取れない。体は動かない。

 聞いたことのないような雑音が頭に響く。


「ほう。よくやった」


 この声、しゃべり方・・・あのじいさん?いや、もう少し若い男の気がする


「しかし、魂・・・いや人格のジェネレイトに・・・」


「・・・魔導力が・・・そもそもステーブルでは・・・」


 人格?魂?何の話をしているのだ。


「だいじょうぶ。方法はある。」


「大事なのは、”黒”の・・(雑音)・・を生成できたということだよ」




―― 黒?



*** そうだ、おまえは黒の魔法が使える ***



―― 誰だ?





◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇





 頭がゆれる・・・


 オレは今まで何をしていた・・・?

 

 まぶしい・・・目が明けられない。

 


 しばらくして、意識がはっきりしてきた。なんとか目を細めながら開けてみる。

 天井・・・木目が見える。オレはベッドに寝ているのか。木製の古いアパートの一室のようだが。

そうだおれは酔っ払いに殴られて病院のベッドで寝ていたはず。


どこだここ?


 病院着を着ていた覚えがあったんだが・・・なぜか就活のときに着ていたリクルートスーツを着ている。白いYシャツ青いネクタイ、黒の革靴、黒いジャケットとズボン。ただ、カバンや携帯なんかはなくなっていた。ジャケットもズボンも、ポケットの中身は空だった。

 とにかく起き上がろう。おれは起き上がって窓から外を眺めた。


「・・・」


 窓から飛び込んできた光景に思わず「やばい」と声が出そうになった。ここは東京じゃない。いや、たぶんさっきまでいた現代世界ですらない。


 窓の下を眺めると石畳の大きな道路が見える。そこに行きかう人々は、みなスーツなど着ていない。

 そう、よくRPGでみるような中世ヨーロッパ風?の格好をしいる。そしてみんな髪の色が・・・なんというか、カラフルだ。赤、白、銀、緑・・・。


 そして道路の脇を固める建物は、これもよくドラクエなんかで見るような木造の建物だ。木造で2階建てくらいの建物が石畳の道路沿いにびっしりと並んでいる。

 ここまでは、まあ現代でもありえなくはない。


 しかし、その街並みの先に、塔のような細長い建造物が空高くそびえ立っている。色は暗い銀色だが、青くぼんやりと光っているように見える。その上は霞んでいて、どこまで高いのか確認できない。

 あんな建物は、さっきまでいた現代には絶対に存在してない。スカイツリーや東京タワーや六本木ヒルズよりもずっと高い。


 そして、その周り、街の上空を、底が青く光る銀色の箱のようなものが飛び回っている。あれは何かの乗り物だろうか。ここからでは小さすぎて確認できない。


 バベルの塔・・・そんな言葉が頭に浮かんだ。



――――転生してしまった



 絶対にあのじいさんだ。思い出した。


「勤務先は異世界」


 意識がなくなる前、そんなふざけたことを言っていた気がする。いや、ちょっと待て・・・おれは内定承諾した覚えはないぞ?

 なろう小説はよく読むが、まさか自分が転生することになろうとは。この場合、自分はリクルートスーツを着たまま別世界に来たわけだから異世界転生じゃなくて転移なのか。

 あれ、なぜじいさんはオレにリクルートスーツをわざわざ着せて転移させたんだ?

・・・・まあ、そんなことはどうでもいい。問題はこれからどうするかだ。



― NNTグループ ―



 そうだ。あのじいさんが言っていた会社名だ。

 これがあのじいさんの言ってることが正しいなら、オレはこの世界でNNTグループの社員になっているはずなんだ。


 オレはとりあえずこの部屋を出て、あのデカい塔を目指すことにした。あの中にNNTグループがある。オレの野生のカンがそう言っている。

 だからあのじいさんは、窓からあの塔が見えるこの部屋にオレを転移させたのだ。そう考えると納得がいく。そうか、だからスーツを着て転移したのか。


 なんか猛スピードで現状を受け入れつつあるな・・・いや、就活で大事なのは切り替えの早さだ。

 一社に落ちても落ち込まない。すぐに次の面接に備える。そう対策本に書いてあったのを覚えている。まあ、もうオレの就活は終わってしまったようだが。


 オレは部屋のドアを開けた。どうやらここは2階のようだ。宿か何かなのか?とにかく外に出よう。おれはすぐそばにあった木製の階段を降りて、出口に向かった。


 出口付近にあったカウンターには老夫婦が座っている。ここの宿の主人のようだ。


「どうも」


 おれは軽く挨拶して外に出た。


「ああ、いってらっしゃい」


 ドアを開けると、今まで嗅いだことのないような不思議な空気が飛び込んできた。東京、故郷の長野の山奥。そのどちらとも違う空気。でも何故かそのどちらよりも懐かしい気がする。



「・・・ばあさん、あんな子、泊めたっけ?」


「さあ・・・」



(分割しました)

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