31.マツバの夢
マツバのブログを見てみると、コメント欄に返信があった。
俺の書いたコメントは、『マツバの夢ってなんだ?』だ。
その質問への答えは……
『生きたい』
ただ、一言だった。
「マツバ……」
俺の手は、しばらく動かせなかった。
こんな答えが返ってくるなんて、よっぽど苦しい証拠だろう。
けど、それでも。
『死にたい』って書かれてなかったことに、俺は安堵した。
「大丈夫、大丈夫だ……苦しいのって、絶対にいつか過ぎるんだから……っ! 頑張れ、マツバ……っ」
同じ病気を患ってても、受ける苦しみは人それぞれだ。同じ症状が出ない限り、俺はマツバの苦しさを理解してはやれない。
けど俺は、誰よりもマツバに良くなってほしいと思ってるんだ。同じ病気の俺が、誰より。
『生きられるに決まってるだろ! 将来はなんになりたいかって聞いてんだよっ』
弱気なマツバなんて見たくない。俺はマツバを励ましたいと思いつつ、喧嘩腰になってそんなコメントを送ってしまった。
『看護師……かな』
返ってきたコメントを見て、俺は目を丸める。マツバも案外単純だよなと、クッと笑った。あとで園田さんに看護師になりたい奴がいたって教えてあげよう。
『男の看護師もかっこいいよな! 』
『早く退院して勉強頑張らないとな』
『そうだよ! よくわかんないけど看護師になるのって大変そうだし!』
『うん』
最後はもう疲れたのか、そんな返事だけで終わった。けど少し前向きになれたマツバを見られた気がして、ホッと息を吐く。
「頑張れ、マツバ……」
八ヶ月も入院してたら、きっと高校生のマツバは進級できないだろう。他の人より一年遅くなるだろうけど、逆に言えば勉強をじっくりできる時間は取れるはずだ。
俺はサッカー選手、マツバは看護師、守は医師、リナはパン屋、拓真兄ちゃんはパティシエ、祐介は……うん、そのうちちゃんとした夢ができるとして。
夢を叶えたみんなに会いたいな。守が医者になるのは二十年以上先の話だろうし、その間に夢も変わってるかもしれないけど。
大人になったみんなと会う。それがもう一つの俺の夢になった。
短くてすみません……
風邪引いて書けませんでした……m(_ _)m




