国営ゲームは突然に
年の始め、それはありとあらゆる情報機器で、緊急速報のように割り込みするような形で国民に伝えられた。画面に現れたのは、よれたスーツを着た一人の男。出来ないサラリーマンのような痩せ型で不精な姿だが、瞳の奥に潜む鋭い眼光と全く臆することない堂々とした態度から、切れ者の雰囲気を醸し出している。
「国民の皆さんこんにちは、飛鳥舞都です。大体の人は初めましてかな。それはともかく、皆さんはこの放送を携帯端末から街頭の巨大スクリーンまで様々なもので見られていると思います。緊急地震速報みたいに強制で送っているので、電池を使わせてしまっていたらすまないね。手短に話を終わらせますよ」
さてさてと、男はぴらっと一枚の紙に目をやり、その内容を見言葉にした。
「近年頭角を現したエレクトロニック・スポーツの影響で子供の学力低下は著しく、文部科学省がエレクトロニック・スポーツに夢中な方々に何とか勉強してもらわないと、この国の将来がまずい状況らしいです」
やれやれと手を挙げ顔をすくめる。
「それで、この状況を打開するために、国と国を代表する有数のゲーム会社と協力してゲームを製作しました。
最近、国内の多数のゲームがサービスを終了したのは、協力を依頼したゲーム製作会社に、このゲーム一本に力を注いでもらうためです。このゲームの為に終わってしまったものを遊んでいた方々には、ゲーム会社から補償してもらうよう手配してあります」
補償内容は新しく始まるゲームのステイタスボーナスと、課金額に応じた返金となる予定ですと付け加える。
「このゲームは前述した通り、子供に勉強してもらう事を目的としております。なので、ゲームだけしてれば「俺、つえええええー!ふぉおおぉおおぉー!」なんてことはできない仕様となっております。ゲーマー諸君の心境はお察ししますが、文部科学省の政策なので諦めてください。で、どういう仕組みかと言いますと、このゲームは、ゲーム内ステイタスと現実世界の成績の合算で決まります。
現実の成績がゲームにボーナスとして加算されるわけですね。簡単な話、ゲームで廃人するよりもリアルとのバランス取った方が強くなるよって事ですね。
あと、ゲームなんてしねえよって言う現実が充実している人にも恩恵があるように、賞金が出るイベントとか大会とかバンバンやるし、リアルにも影響する特典とかガンガン出す予定だから、期待していてください。
リアルなんてめんどくせぇ、俺は海外ゲームで遊ぶって言う方は止めはしません。ただ、このゲームは国内の有力ゲーム会社の技術と国の金をじゃぶじゃぶ注ぎ込んで作った物です。作品の出来は、わかりますね?」
ゲーム会社が損得抜きで最高のパフォーマンスを発揮した代物。いくら製作費がかかろうが利益が出なかろうがいいのだ。徹底的に追及した傑作、それがどういう意味か、通の人間ならばわかる。
「文部科学省やゲームの制作会社のホームページに、ゲームの説明を載せているので、分からなかったらそちらも参照してください。それでは楽しいゲームライフを」
切れ者男が一礼して、その映像は終わった。