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小さな殺戮者7

 田舎ではなく都会に生息していそうなそんな新女子高生が、Esそのものを連想させる波動を凄絶に開放していた。



『手加減? チョーシこいてんじゃないわよ!』


「麻衣の体力、大丈夫なんでしょうか? 今すぐ止めるべきですよね!?」


「止められるものなら、な。ちょっと試しにやってみたらどうだ?」


「はい! ……麻衣、夏那美、やめろ! どうして味方同士で――」



 水谷は恭平から許可をもらい、ミュートにしていたインカムを解除して叫ぶが、



『黙れっ! 司令官でもないアンタにそんな事言われる筋合いなんかないわよっ!』


『水谷さん、申し訳ねぇだ。おら、今回ばかりは我慢できそうにねぇだよ……!』



 二人の威圧に、水谷は顔を引きつらせて言葉を失った。



 やっぱりな。こうなるとは思っていた。夏那美の熱血で赤い炎に対し、麻衣の静寂なる青い炎か。……ていうか、夏那美。お前いつも俺の命令を無視するよな? 本当に俺の事を司令官として見てくれてるのかが気になって仕方ない。



「ヤバいですよ、麻衣。体力が60%に低下しています!」



 再びマイクをミュートにして、水谷は声を震わせながら、手元のホログラムを確認しながら麻衣の体調を気にしていた。



「うーん、脈拍も芳しくないな」


「まぁイイんじゃない? 見てるこっちとしては楽しいんだからさ」



 三人いるオペレーターの最後に言い放った御堂(みどう)百合(ゆり)はどこからかポップコーンを取り出してケタケタ笑いながら食べている。隣の前原(まえはら)(かなめ)に袋の口を向けながら。



 百合は……こいつは根っからの夏那美信者だ。夏那美の強さに憧れているのが理由の一つだろう。っつーか、


「お前ら。ここは映画館じゃないんだぞ。そんな堂々と勤務中に菓子を食うな」


「えー? バレてた?」


「モロバレだ」


「ホント、堅い奴だな。将来ハゲる上にモテないぞ?」


「大きなお世話だっ!」



 * * * * * *

 ――桧原村、空域――



 相も変わらず突風が周囲を支配している。ばさばさと激しくなびく髪を、夏那美は手首に巻いていた髪ゴムを肩辺りで両結いした。これが本来のスタイルなのか、彼女の髪に違和感はなくなっている。



『お前ら、喧嘩は桧原村だけにしておけよ?』



 通信機から響いてくる恭平の言葉をスルーしているのか、それとも今の二人にはまったく届いていないのか。夏那美と麻衣は口を閉ざしたまま瞳だけで言葉を交わしている様子だった。



 まさか、麻衣がこの私に真正面からぶつかってくるなんてね。日霊保も退屈しのぎにはなるみたい。それにしても、このプレッシャー。ハバネロみたいだけど、悪くない。それでこそ料理しがいがあるってものよ。マルコシアス同様、魂の欠片も残さないわ。


「させねぇべ」


 ――? なに、こいつ。もしかして、私の考えが読まれてるの? それとも、今のタイミングは偶然? ま、そんな事考えるだけ時間の無駄か。……SS級の魂が完全に浄化するまでの時間は分からない。SSS(スリーエス)級は歴代特一級の記述によるとおよそ五分らしいから、それ以下と考えるのが妥当。(ワンエス)級のザコなら、およそ一分。だとしたら、SS級は間を取って浄化までだいたい三分くらいかな? つまり三分以内でケリつけて、あのナメ腐った犬の魂に追い打ちをかけるっ! 正直、一度この女と闘ってみたかったのよね。作戦会議の時しか話さないからどんな能力を持ってるのか気になってたし、挙句にはこの私を差し置いて特殊任務に就いてるみたいだし。……こんな涼しげな顔してる奴が恐怖に顔を歪ませる瞬間って、思い浮かべただけでもゾクゾクするなぁ。



 夏那美は槍を持ち直し、目にも見えないスピードで突貫して突きを放つ。底辺のプロなら今の一撃で確実に勝負は決まっていただろう。なにせ、攻撃の発生が早すぎて見えなかったのだから。



 ――かわされた!? ……偶然よっ!



 空中で直角に軌道修正し、なおも麻衣に攻撃を仕掛ける。が、さらに空振り。無駄斬り、フルスイング。どれだけ迅速に効率的で有効だと思われる攻撃を仕掛けても、すべて回避されていた。


 ……


 …………


 肩で息をしながら夏那美は麻衣を見つめる。



 なによ、こいつ。攻撃がまったく当たらない。突いても薙ぎ払っても、フェイントも無効化される。


「この程度で息切れだべか? これなら、そこらの五級の方がよっぽど強いべよ」


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