小さな殺戮者6
くそっ、モニターの大半が壊されてしまったからか? ここからじゃ、ほとんどなにも確認できない!
『ふん。とんだ見かけ倒しだったわ』
巨体が森林の葉や田んぼの水しぶき、土煙を舞い上がらせて倒れていく。16番カメラで夏那美が着地したのを確認したと同時に、恭平はマルコシアスの羽根の間から、小さな『なにか』が彼女に向かって落ちていったのも確認。
「あれは?」
恭平はつい声に出してしまった。メインモニターのスカイツリーからの映像を、16番カメラに切り替える。
「木箱、でしょうか? なんか年期入ってますね」
唯一の男性オペレーターの水谷が、恭平の独り言に律儀に答えてくれた。夏那美は足元に飛んできたそれを炎の消えた槍の柄先で砕く。
肉体が透明化しながら倒れたマルコシアス。無数の光の粒が、フワリと上空へと上がっていく。魂が浄化している証拠だ。
『魂の欠片も残さないって、言ったでしょおがーっ!』
「言ってねーだろっ! 今すぐやめろ! 条約違反だぞ!」
追い打ちをかけるように再び上空へ猛進する夏那美。恭平が言うまでもなく、上空で待機していた麻衣が自分の身長よりも少し長い三節棍を、横髪にクロスして留めていたピンから漆黒の光とともに即時装備して夏那美の前に立ちはだかった。涙の全てを解放したのか、据わった目付きで睨みつけている。
『おめ、本当に哀しい人だべな。そんなにおらを怒らせてぇだか』
『なにワケ分かんない事言ってんのよ、アンタは!』
『とにかくマルコシアスの魂が冥界に行くまで、おらが相手してやるだ。大丈夫。ちゃんと「手加減」してやるだよ』
見た目は中学生で十歳くらいに聞こえるキンキン甲高い声。しかし裏腹にキリキリと瞳孔が狭まっていき、完全に獲物を狙う瞳になっている。
麻衣と夏那美は同い年で、同じく今日が入学式なのだが……別の意味で、すでにもう制服を着こなしていた。
ふんわりと広がった麻衣の髪は、束ねた後ろ髪のみ腰まで長く、鎖骨が見える範囲までカッターシャツのボタンを外して開いている。 その上から義務的につけているかのような、拳二つ分くらい余裕のある輪になったユルユルなネクタイ。男を誘っているとしか思えないくらいに細くて綺麗な太ももが見えまくった短いスカート。見た目が真面目そうな夏那美とは対照的だ。