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小さな殺戮者5

『退け、麻衣。お前じゃ、今の夏那美の攻撃は防ぎきれない』



 夏那美と麻衣の通信機から同時に恭平の声が響いてくる。彼は、今の夏那美になにを言っても無駄だという事を悟ったのだろう。



「だ、だけど、おら……」


『お前の気持ちは分かる。だけど、このままじゃお前まで死んでしまうぞ!』


「……おらは警告したべさ。あとは、おめが決めてけろ」



 通信機に視線を送っていた麻衣が、澄んだ湖のように瞳に涙を浮かべて夏那美を一瞥する。



 そんなの決まってる。浄化する以外に私のストレス発散方法はない。ぐすっと鼻をすすり、麻衣は空中で踵を返して緊急退避した。やっぱり、私が特一級の中でも最強。……誰も、私を止められない。止めさせない。


「くたばれーッ!!」


 マルコシアスがお座りしてる……? 私の力を侮ってるの? 上等だよ。やっぱりアンタ、魂の欠片も残さない!



 * * * * * *

 ――日霊保、本部――



 野球場一つ分くらいはありそうな司令室。


 桧原村に張り巡らされているうち、生きているカメラのモニターを細部まで確認している男の姿があった。日霊保総司令官、西嶋恭平だ。


 年の頃は二十代後半くらいだろうか。真っ黒なスーツ姿に身を固めてはいるものの、ネクタイの柄がシリアスな彼の雰囲気を台無しにしてしまっている。女性から見てみると容姿の方は可もなく不可もなく。正直どうでもいいタイプだろう。あとは性格の問題でモテたりもするだろうし、嫌われたりもしそうだ。簡単に言えば、ありふれた顔に普通の体系。


 そんな男の顔が曇っている。数日間眠ってなさそうなくらいに目の下にクマができているにもかかわらず、食い入っている。


 彼の立つ十一時の方角には、目の悪い者が端から見ても余裕で確認できるほどの巨大なモニター。東京スカイツリーの望遠レンズが、マルコシアスと夏那美の勝負を中継していた。



「出ましたっ! マルコシアスのレイベル数値、およそ15,250,000です! SS(ツーエス)級Esに相当! ……だったんですけど、……あれ?」


「ウソ、だろ?」


「まさか! たった一撃で……たった一人でSS級を!? ……さっすが夏那美。やってくれんじゃん」


 変だ。いかに特一級だとしても、リミッターを解除していない状態で、SS級の天使や悪魔に人間が敵うはずがない。客観的に見て不意打ちを食らったようにしか見えなかった。どこかに、なにか見落としてる部分があるはず。それも、とてつもなく大きなもの。Esや人の心を読める麻衣が、夏那美の攻撃からマルコシアスを護ろうとした。それだけで十分な証拠だ。俺の予想だとマルコシアスは――。だけど、物的証拠がない。



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