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小さな殺戮者4

 こんな時、パパがいたら私を叱ってくれてたのかな? 私の入学式なんてどうでもいい。だけどせめて、ママの命日くらい連絡寄越しなさいよ。バカ親父……! もう世界がどうなったって構わない。こんなくだらない世の中、私が全部ブッ壊してやる!



 業火が爆発的な勢いで夏那美の槍全体を覆った。その炎自体が意志を持っているかのように次第に矛から真っ赤な翼を広げて具現化していく。



『やめろ、夏那美! お前、さっき墓の前で手を合わせてたよな!? そこには大切な人が眠ってるんじゃないのか!?』



 夏那美は槍を片手に、地表へ投げつける寸前で手を止めた。



 たしかに、ママが眠ってる。いつでも私の戦いを見てくれている。



「私に命令すんなって、言ったでしょ!」



 だけど今回ばかりは助かったかもしれない。頭に血が昇りすぎてて気付かなかった。……攻撃力は落ちちゃうけど、仕方ない。手加減して戦うしかない。



「感謝しなさいよね。今回だけは、命令に従ってあげる」


『ばかっ! やめろ! 攻撃すんなって――』



 夏那美は槍を持ち直し、恭平の命令を完全無視して全速で突進し始めた。いかに上空約五千メートルとはいえ、マルコシアスが両前足を上げて跳ねれば、噛み付かれて地上へと引きずり下ろされてしまうだろう。


 氷点下およそ三十度から平然と言っていた彼女は、よほど空中戦に長けているらしい。地上へ向かって突貫している間に聞こえる日霊保から民間人への緊急避難勧告サイレンが、夏那美にとっては耳障りで仕方がない様子だった。



 とっととシェルターに避難しなさいよ、凡人共が!



 ギリッと奥歯を噛みしめて目標を睨む。マルコシアスの眉間へ槍の狙いを定めて攻撃した瞬間、超高速で悪魔との間に割って入る者の姿が目に入った。


 その者は夏那美の攻撃を防ぐシールドを瞬時に展開して、関東甲信越の上空全域を覆っていた。矛と盾が衝突し合い、激しい稲妻が日本全土の空域にほとばしる。



「麻衣!? 邪魔よ! アンタなにしに来たのよ!」


「やめてけろ!! この人は、おめの敵じゃねぇ……!!」


「敵よっ! Esは全部敵っ!!」



 顔の原型も分からないほどの涙をこぼしている麻衣に対し、夏那美は首を振る。



 人間だったとしても私の味方は一人しかいない。百合ちゃん以外、誰もが私の力を手に入れたいと思っている。それはあの西嶋恭平も同じ。結局私は、霊保の操り人形に過ぎないんだ。どこかでウサ晴らしをしないと気が済まない。人間に対してこんな力を使ったら傷害罪になってしまう。だったら、私は私の力を使ってEsを浄化して、それをお金に換える方を選ぶ。

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