立ちはだかる者。13
「黄志夏那美。ここのエースをぶっ潰しに来ました」
レンズを光らせ、強い殺意を込めた声で彼女は部室を見渡した。先輩らしき人物は三人しかいない。夏那美からしてみると背の高いであろう少女が本を開いて椅子に腰かけている。隣にはゲームのコントローラーを握ったミディアムヘアの可愛い童顔少年もいる。そして少女漫画をアイマスク代わりに横になっている女の子……。推測では小学生くらいの身長だが、それでも制服はこの学校の物だ。
「じ、神通力を張り巡らせた特殊ガラス結界を、一瞬で……!?」
「さ、さすが、現役の特一級。ボクたちの予想を、はるかに超えてる……!!」
全身の毛を逆立たせ、冷や汗ダラダラで顔を強張らせている先輩たちに対してキツく目を尖らせる夏那美だったが、北原がなんとか割りこんで『今日からお願いします!』と深々と頭を下げる。
「そ、それじゃあ、入部テストやってもらおうかな?」
我に返った少年の先輩は、コントローラーを置いて、とりあえず二人を席に着かせた。
「えっ? 入部テスト? 聞いてないですよ、そんなの。オレたちは特待生として――」
「もちろん。言ってないからね。この学校の六割は霊能部員だから、ちょっとしたテストをさせてもらってるんだ。大丈夫。ペーパーテストがダメだったとしても、実技もちゃんとあるから。北原くんと黄志さんなら、少なく見積もってもベンチ入りは確定だろうし」
「ベンチ入り? あんまりナメた口きかないで下さいよ先輩。この私が全国優勝まで導きますよ」
「そ、それは頼もしいね。だけどとにかく、テストはやってもらうよ」
「ふンっ! 実力がすべてなのよ! ペーパーテストなんてなんの意味もないわ!」
「黄志……さん? そういえばこの問題、この霊能部の人が作成したんですよ? 十数年前、弱小校だったこの高校を三年連続で極龍旗優勝へ導いて、なおかつツインウルフもブラックタイガーも三年連続優勝を果た伝説の人。たしか、同じ名字だったような気がするけどぉ……」
ビクビクと顔色を窺っている先輩の少女から、気になる返答があった。『極龍旗』『ツインウルフ』『ブラックタイガー』は、それぞれ全国大会の種目。五人揃った団体戦から、ダブルス、個人戦まで用意されていたりする。ピクリと顔を上げてその少女を見ると、埃かぶった棚から『knight』と題されている一冊の古ぼけたアルバムを抜き取っている。虫食いだらけで穴が空きまくっているが、中の写真は生きているようだ。
「ちょ、見せて!」
先輩というのも忘れて、夏那美はアルバムをぶん取った。
「……えっ!?」
夏那美が分厚いアルバムを開いた瞬間、周りの空気が固まる。というよりも止まってしまっ
た。