表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/123

立ちはだかる者。12

「ここか?」



 次々に部屋を開けては閉めを繰り返し、ようやく最後の扉にたどり着く。


 その引き戸を開けた刹那、結界でも張ってあったのか……ただならぬ波動が廊下へと出ていく。それはまるでドライアイスを透明化させたような、ゆっくりとした動きで。逃げ水のような蜃気楼を放って。レイベル数値だけだと二級霊師に届きそうな北原でさえ小さく『うっ』と声を漏らしたくらいだ。



「だっ、誰?」



 中から声が聞こえてきた。肩を震わせたような臆病な声。甲高いその音色は警戒しかない様子。



「オレ、今日からこの霊能部にお世話になります、北原(きたはら)(まもる)っていいます!」


「ぁ、あなたが北原さんですね?」


「いらっしゃい! 来るのは聞いてたよ。まさか、インターミドルのブラックタイガー実力者がウチの部に入るなんて思ってもみなかったよ」



 次に言った声の主はわりと落ち着いた感じの低めのトーンだ。声だけ聞くと、どうやら少年らしい。ちなみにブラックタイガーというのは個人戦の事だ。実はエビの名称だというのを、この少年たちは知っているのだろうか。


 部室のテレビで麻雀ゲームをやっていた少年は、手を止めてまじまじと北原を見つめた。



「今さらなんだけどさ、なんでウチの高校選んだの? キミの実力なら、こんな学校より全国区の高校に推薦で行けたはずなのに」


「オレ、昔この高校に在校してたレジェンドに憧れて入学したんです!」



 迷いもなく、北原は言い切った。廊下の奥でまだ考えこんでいるのか、夏那美には聞こえてないらしい。



「あぁー、分かるよ、その気持ち。あの人は本当に凄かったよね。特殊能力の『熱血』『魂』とスキルの『一気通(いっきつう)(かん)』。『絶対に不可能』と言われてたブラックタイガーの三連覇を成し遂げた伝説の人だもん」


「そう! 超攻撃特化型の桧原守護神!! オレ、もう一度この学校を全国に導きたい。だからこの学校に入学したんです」



 一言二言で、すでに打ち解けている。和気藹々(わきあいあい)と話し、会話が少し詰まったところで少年は話題を変えた。



「だけどおかしいね。もう一人、とんでもない人が来る予定なんだけど……」



 少年がそう言った直後、引き戸前で考え事をしていた夏那美が部室へと入っていく。足を一歩踏み入れた瞬間、全てのガラスが乾ききった猛烈な音を立てて粉砕した。窓際の棚に寝そべっている一人を除いて、誰もが顔を引き攣らせて彼女を見つめる。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ