小さな殺戮者。20
なんだなんだ……なんだ!? この差は!! 俺が休みを要求すると『あ? お前ナメてんのかよ?』って頑なに拒むくせに、なんで弐番隊だけ二つ返事でOK出すんだよ!? こいつらだって会長命令だったら大人しく従うと思ってたのに!
イライラしながらも恭平は表情を無理に弛緩させて三人に笑顔を向けた。目が笑ってない。鬼畜スマイルというやつだろう。
「お前ら、入学式行ってきてもいいぞ」
「え? 本当ですか!?」
「マジか。デジカメデジカメ。ぁ、ムービーの方がいいな」
「やったぁっ! 恭平も、たまには使えんじゃーん?」
「で、ですよね! 俺だって、やる時はやりますよ……!」
驚愕している水谷の隣、要はムービーを探して、百合はいつの間に接近したのか俺の脇腹を肘で小突いている。
「声、震えてるよ~? どうしたの~?」
「べ、べつに、なんでもないですよ!」
だいたいお前のせいなんだがな、百合。なんで俺より偉そうにするんだよ。
「じゃあ、今から行かないと間に合わないんで、僕はそのまま行きますね。お先に失礼しまーす!」
「あぁ! 操作ミスすんなよ? おつかれー!」
やっぱり、水谷だけは見ていて心が休まるいい奴だ。ベルト式の人間用Agps(反重力推進システム)(Anti gravity propel system)を片手に大きく手を振っているそいつを、俺は快く見送った。
「じゃ、私も行ってくる」
「あぁ。高度に気をつけろよ? ビルにぶつかって即死、とか三面記事にも載らないミスすんなよ?」
「……分かってる」
要も要で、悪い奴じゃない。普段寡黙だから冗談が冗談に聞こえないだけだ。問題は、こいつなんだよな。
恭平は百合に対し、氷のような冷たい視線を送ってチッと軽く舌打ちをした。
「お前それでも上司か」
「るせー。お前もサッサと行けよ」
「なにおぅ!? 貴様の『自動車』というやつに乗ってやろうと言ってるのだよ、私はっ!!」
「いやいいから。むしろ困るから」
冗談抜きに、もうやめてほしい。そんなに車が珍しいのか?
だが、たしかに珍しいかもしれない。現在、東京の道路のほとんどは警察や自衛隊、消防、救急隊、タクシー会社くらいしか使っていない。首都で車を持っているのは一つのステータスだ。物好きな金持ちか、恭平のように特務に就いている者か。銃を所持するように東京では特殊免許が必要になってくる。




