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小さな殺戮者。18

 思ってもいない会長の言葉に、恭平は思わず目を点にして睡眠不足で鈍っていそうな思考を巡らせる。



「え、いいんですか?」


『あぁ。ただし、条件があるがな』


「なんです? 休みが貰えるなら、なんだってしますよ」


『そ、その……あれだ。あの……』



 落ち着いた雰囲気からは想像を絶するほど、言葉を濁らせている。ここ一ヵ月、まともに休んでない。睡眠時間は一時間半だった。会長のここまで言いにくそうな口調は、恭平が本部で勤務し始めてから初めての事。なにか裏がありそうだ。嬉しくてつい『なんでもする』って言ってしまった件は、彼の反省点だろう。



「……なんでもいいですから、はっきり言って下さい」


『わ、分かった。じゃあ。「よぉ、元気かサノバビッチ。今日は夏那美の入学式に行ってやれ。話は後だ。来なかったらテメェのアスホールにアイスの棒を挿入してやっからな。覚悟しとけよ」……以上だ』


「いやサノバビッチじゃないですけど」



 反抗途中で電話を切られてしまった。


 『以上だ』って……アンタが異常だろ。まさかあのお姉さま(見た目は年下だが)から『クソ野郎』だの『ケツの穴』だの、挙句の果てには『挿入してやっからな』なんて言葉が出てくるなんて思ってもいなかった。まぁ棒読みに近かったし、誰かが台本かなんかを書いてそばに置いてたのか?



「よかったですね、休暇!」



 ほんの少し会話の内容が聞こえていたのか、水谷は椅子の方向を俺に向けて祝福してくれている。



「あぁ。急遽夏那美の入学式に行かなきゃいけなくなった」


「えええぇ~! なんで私じゃなくって恭平なの!? マジやってらんなーい!!」


「……いや、だから俺、一応年上の上に先輩なんスけど、百合さん」



 椅子の上で子供のように手足をジタバタさせている百合だが、彼女はまだ勤務中だ。年下のくせに呼び捨てにされるわ、もう散々。どこかの誰かを思い出してしまう。まぁあそこまでヒドくはないか。



 ていうか、なんで俺があんな女の入学式に行ってやらねーといけないんだ? 罰ゲームか? どうせ行くなら、葉月の入学式に行きたいんだけど。



「ぁぅぅ。恭平くん、私、ちょっと腹痛が痛くなってきた。早退していーい?」


「ハイパー焼きヤモリ味なんて食うからだろ。っつーかそこ、頭だから」



 日本語がおかしいのと仮病丸出しなのは把握した。こいつは本当に隊長なのだろうか? 少なくともお前は全国の弐番隊のお手本にならなきゃいけない人物だろ。あっさり帰っちゃあいけない。というかなんで机上の写真見つめて言ってる。上司は俺だ。せめて俺の目を見て言ってほしい。



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