小さな殺戮者17
【ぁ、あのね。疲れてるのに無理言っちゃって、本当にごめんね。私、そろそろ……こ、子供が欲しいのっ!】
「うぉぉ! 俺、会社休むうぅぅッ!! ……ぬふ。ふへへ。でぇへへへへっ」
「に……西嶋さん? 声、出てますよ?」
「顔にも出てるけどな。本当、分かりやすい人だ」
恭平を現実に帰そうとする水谷だったが、要にバッサリと切られてしまった。面白くなさそうに見事な『へ』の字を描いた口元の百合がモニターへと視線を向けると、そこには夏那美の姿が。
「あれ? 夏那美ー、どこ行くの~? 本部、寄ってかないのー?」
『ごめん、百合ちゃん。今は……一人にさせて』
あー夏那美は却下だな、うん。百合いわく外見はモデルとしても十分やっていけるっていうけど内側がヘビだ。金の亡者。あのクソ女、葉月や麻衣の分の賞金首も残しておけってんだ。てかあいつ、今貯金いくらあるんだ? 俺の貯金より多かったら許さねー。理由は分かんねーけど、許さねー。あんなのと結婚してみろ。人生の墓場だ。もしあんなガキが家に転がり込んできたら……
「ああああああああああああああああああああああっ!!」
モニターの椅子に腰かけていた水谷、要、百合はびっくぅと恭平の咆哮に盛大に肩を揺らした。ニヤけていたと思ったら突然頭を抱えて、変な上司を持った部下も迷惑しているだろう。
お、俺の処分……会長からの処分が、夏那美との同棲? マジでやるのか? 【夏那美の笑顔を取り戻そうぜ。お前がやるからヘーキヘーキ大作戦】。
『夏那美、話があるから入学式終わったら会長室に来い』
突然会長の声が通信機を通して恭平たちの所に響いてくる。
『ぁん? 今度はなに? カイチョー直々にどうしたの? 今、ちょっと話しかけないでほしいんだけど。SSS級討伐の話?』
『バカかお前は。とにかく、学校が終わったら来い』
冷静な声だが、言葉の裏に秘めた殺気が見え隠れしていた。
これは、ただ事じゃない。ヤバいぞ、俺のバラ色設計図。まさかまさかの……
――プルルルッ
緊急時用とは別にある会長専用の内線が入り、滝のような汗とともにギチギチと恭平はそれに顔を向ける。一コール目でパチパチと瞬きし、二コール目で固唾を飲み、三コール目にしてようやく重々しく受話器を取った。
「に、西嶋です……」
『新たな指令だ。お前、今日は休め』
「へっ?」