小さな殺戮者16
葉月は本当に要領がいい。自主的にEs戦に参戦してくれたら恭平としては楽なのだろうが、どこかの支部がよっぽどピンチにならない限り今回みたいに普通にシカトされる。偵察や誘導……壱番隊だと力を持て余すし、だからといって肆番隊のように回復させる力を持ってない。彼は、今のところ、このまま遊撃でいいかと妥協する。
だけどあいつ、本当に日霊保で稼げてんのか? 特別報償金が総額三百万円出るS級のEsなら、どこかのクソ女同様楽に倒せるくらいのレイベル数値持ってるのに。どうして賞金首討伐作戦に参戦しねーんだよ?
S級で思い出したが、葉月ならリミッターは必要ないかもしれないな。どこかの暴力バカとは違って力を制御できるし。いやいや、待てよ俺。えこひいきするのは良くない。特一級は今まで例外なく特殊リミッターをつけていたじゃないか。葉月には悪いが、リミッターをつけたままにさせてもらおう。
あぁ、それにしても、本当にいい。まさに天使だ。あんなパーフェクトな女の子が俺の嫁になってくれたら。ふふ。ふひひ。ひょほう。
「マルコシアス、浄化完了を確認しました」
い、いやいや。犯罪だ、犯罪。たしか、今日から葉月も高校生だったはずだ。あと三年待たなきゃいけない。だけど、高校で彼氏とかできたらどうしよう?
「あの、西嶋さん?」
そ、その時はもう諦めて麻衣にしようか。リアクションに困る反応とえせ津軽弁が気になって仕方ないけど、東京に住んで標準語になれば、ただの天真爛漫な美少女だ。……キレた時が怖いけどな。夫婦喧嘩でブルー・アイを発動されたら、一方的にやられそうな気しかしない。
「ダメだな、こりゃ。完全に自分の世界に入ってるぞ」
「サハラ砂漠みたいに鼻の下伸びてるねー。まったく、一体なに妄想してんだか。っつーかハイパー焼きヤモリ味、んまーっ」
病弱なところがたまに傷だけど、そこを補ってこその旦那だろう。そして病気が完治したら……おっと、いかんいかん。麻衣は半径二十メートルの人の心が読めるんだった。もし俺に照準を合わせてたら、俺の輝かしい未来予想図が即バレてしまう。ここから肆番隊の所まで数キロあるから平気だろうけど、いつも気を引き締めておかなきゃな。だけど。
【はい、あ・な・た。心を込めて作ったお弁当よ。今日もお仕事、がんばってねっ】
「あぁ。がんばるよ。俺、いい旦那になれるかな?」
【なに言ってるの。もう私の目には、あなたしか目に映ってないから。浮気なんてしたら、絶対に許さないんだからねっ!】
……いい。最高だ。そして、行ってきまチューして、