小さな殺戮者12
「ま、イイんじゃない? 私たちにはカンケーないしぃ。夏那美が麻衣に負けるなんてあり得ないしぃ~」
三人はモニターに向きなおり、水谷と百合は要をはさんで会話していた。
「そんな事より、水谷くんも食べる? ハイパー焼きヤモリ味っ!」
「な、なんか、微妙にまずそうですね」
――プルルルッ
緊急時用の? また会長か? 今度はなんだ?
「はい……西嶋です」
『おぉ! 西嶋総司令官! ふぅ、よかった。死んでない』
「勝手に殺すな」
この女の声は、たしか東京支部の司令官か。
『心配してたんですよ? まさか特一級同士が闘ってるなんて滅多にないですからね。【本部、陥落しちゃってたりなんかしてー】ってな事、思ってました』
「そう簡単に陥落してたまるか」
『ではでは、早速許可をお願いしますッ!』
「は? なんの許可だよ?」
『もぉ、なに言ってるんですかぁ。リミッターを解除したはいいけど、二人とも暴走してしまったんでしょー?』
「誰が言った、そんな事」
『出しましょうよ、許可っ! これからが見せ場じゃないですかぁっ!』
「……分かった。お前の言いたい事はな。だけど暴走なんか――」
『撃てぇぇぇぇーッ!』
「はぁっ!?」
恭平のあんぐりと開けられた口からは、それしか出てこなかった。倒置法で言ってしまった事が原因だったと思われるが、命令を出したくて出したくて、ウズウズして仕方ない東京支部の司令官も原因だと思われる。彼女の目がらんらんと輝いていた事は、彼もニュアンスでなんとなく分かっていただろう。
待ってました、と言わんばかりにShからゴッパンと主砲が発射され、特二級霊師からは大霊術の合唱。戸惑いながらも自分の命を日本の未来に捧げようと、対Es用大型ミサイルを抱えて突貫してくる漆番隊。総勢269名からの一斉攻撃で、さすがの特一級霊師も退避する他ないと思われた瞬間だった。
『この私に喧嘩売ろうってぇの!? アンタたちは!』
十機のShの205ミリキャノン砲十発を、目にも写らぬ速さで力任せに槍にて弾き麻衣へと命中させようとする。しかしブルー・アイを発動させていた麻衣には無駄な事だったらしい。またも回避されて、そのまま流れ流れて桧原村へと着弾した。不幸中の幸いというべきか。