小さな殺戮者10
「出ました。えっ? 五級? 500レイベル!? めっちゃくちゃ数値低いじゃないですか!」
「ウソだろ……?」
口癖なのか、要はここ最近『ウソだろ』くらいしか目立った発言をしていない。本部に配属になって半年未満の新人だ。驚く事の連続なのかも。
「ねーねー、ところでさ、なんでこの人プロに認定しないの?」
「……一応俺、上司なんスけど百合さん」
「またそんな堅い事言って。さっきハゲるぞって忠告しただろ?」
「うるせーよっ! んー、理由としては、それにも書いてある通り、条件が揃わないと霊力が解放できないからだな。ちなみに認定しないわけじゃない。自分から申し出てこないだけだ。葉月も夏那美も麻衣も、みんなそうだろ? プロになったらインターハイ出場できなくなるし」
「うぅん、実は僕、プロとアマチュアの違いってよく分からないんですよ」
「……私もだ」
「一般企業の社員とアルバイトの違いみたいなものだよ~。一般企業はボーナス出るでしょ? それと同じ。大きな違いっていえば、はい解説役」
「急に振るなよ! それ以外の大きな違いは、対人戦……プロになったらプロの世界のVSに出場できる権限が与えられるくらいだな。一月から十一月までの期間でVSの獲得賞金ランクの上位、男女別々に十八名が全日本賞金女王決定戦とか賞金王決定戦に出場できる。あれで優勝したら賞金十億円獲得できるし」
ふーん、と一応みんな納得してくれる。
……俺、もう日霊保辞めようかな。水谷だけだ、俺の事を慕ってくれてるのは。だけどそんな水谷もいつかは……。うぅ。
「それにしても、どうして麻衣はこの、えと、天咲に対して怯えてるんですか?」
「そんなの決まってる。自分の能力が効かない上に、戦闘相性が悪いからだ。9:1くらいで麻衣が不利だから」
「そっ、そんなに!? 一体なにが原因なんですか!?」
「たった今言ったろ? 全ては戦闘相性で決まってくるんだ。レイベル数値は、Esに対して有効なダメージを与えられるかどうかの判断資料でしかない。VSのルールとEsを相手にする実戦じゃ根本的に違うからな。体力ポイントとか、攻撃力とか、特殊能力やスキル。実戦に比べて覚えないといけない事が多い。だからどんなプロでもVSじゃアマチュアに負ける事だってあるんだ。水谷、もしかしてお前、VSやった事ないのか?」
「はは。僕は、料理研究部でしたからね……」
霊保とまったく関係ないしっ……! なんでそんな奴が本部に? ぃ、いや、いいよ。うん。水谷なら許す。
「ふーん。じゃあ逆に言えばさ、インターハイでどんなに優秀な成績を収めてプロになった人だったとしても、必ずしも実戦で目覚ましい戦績を残せるわけじゃないんだよね?」