悪役の私
翔様は私が慌てているのを見て訝しげな顔をしています。
ですが、それはこちらの方だと思います。
人の気配なんか感じなかったというのに、翔様はいつから
私の傍にいたんでしょうか。
「あ、あの!わ、私はどうしてここにいるのですか…!!」
「あんたが急に倒れたんだろ。俺の挨拶途中に。何故か新入生代表として保健室に連れてくように言われるし。めんどくせぇ。」
不機嫌そうに美しい顔を歪める翔様。
そ、そうだったんですね。翔様が私をここまで運んで…。
ってえええええ!?
そ、それはなんて申し訳ないことを!!
慌てるよりも謝罪が先ですね!!
「申し訳ありません!!わざわざご足労を!!お体は大丈夫でしょうか!?私なんかを運ぶなんて大変骨が折れたことでしょう…!!」
「い、いや!落ち着けって!!お前言うほど重くなかったし!!ていうかお前こそ大丈夫なのかよ、体は。」
「はい!!この通り体はピンピンしております!!」
なら良かったと。翔様が呆れながらも微笑んでくださいました。
ああ、なんて美しい微笑みなんでしょうか。
これを眼福と呼ぶのですね。
そのあと再度お礼を言うと、翔様は
やるべき作業があるらしく足早に部屋を出ていかれました。
私は新クラスの先生の所に挨拶をしに行くようにと
翔様に教えていただきましたので、今から職員室に向かおうと思います。
そういえば。私は西条院 茜…。なのですよね。
私、ただの一般人だと思っていましたが、
この乙女ゲームの通りに行くというなら翔様達とは
深く関わることになると思われます。
何故なら私は。翔様ルートでの翔様の婚約者で
ライバルの悪役キャラだからです。
前世のゲーム内容を思い出した今では
そういえばこんな見た目の悪役がいたとわかります。
そしてこのまま行くと私は高等部から現れた
ヒロインと急激に接近する翔様達に嫉妬をして
醜い嫌がらせをするのです。
その悪事がバラされ、翔様に糾弾を受け。
崖っぷちに追い詰められます。ええ、本当に崖っぷちです。
そこで間抜けにも足をすべらせ、落下し死亡してしまう…。
そこまで考えて背筋に嫌な汗が伝いました。
嫌です!!そんな未来!!