プロローグ
グロ表現程ではありませんが、
作者の視点では気になりませんが、
時々気味の悪い表現などがあるかもしれませんので、
警告タグは付けませんが、
ここで注意はしておきます。
空がきれいだ…。雲のない、澄んだ夜空だ。
涼人はそう思い、家路についている。
涼人は月を見る。満月だ。
学校帰りで遅くなっているが、何となく…。涼人は夜空をじっくり眺めて見たくなった。
(まぁ…どうせ遅くなったんだからいつ帰っても怒られるのは一緒だろ。)
そう思い、近くの高台…。丘まで行く事にした。近くの裏山に丁度良い公園があるのだ。
この辺は、都市に比べればまぁ田舎な方で、治安はまぁ良い。
というのも、近くに大きな町があるからである。浮浪者や不審者はそちらに流れているようで、町で見掛けることはまず無い。
行ったところで誰も居ないだろうと踏んで涼人はそこでまったりするつもりだった。
…が、先客が居た。
「お…?」
「………あ…。」
入口の階段を登った辺りで目が合った。。 滑り台の上で先客は座り込んで空を見ていたようだが、涼人の漏らした声で、こちらに気付いたようだ。
(あれは…。ウチの制服?)
薄暗かったが、先客は涼人と同じ学校のセーラー服を着ているようだ。
(物好きな女子生徒も居るんだな…。)
そう思い、涼人はベンチに腰をかける。そして空に目を向ける。
(ふう…。)
澄んだ空に星が瞬く。
(…歩きながら見てもあんま変わらんな…。)
涼人は眉を少ししかめた。どこで見ても同じ空という事が少々不満になったらしい。
「あの…。」
「………え?」
先客が突然声をかけた。
「良かったら一緒にお月見しません?」
突然の申し出だった。
「高い所で見た方が何か得した気になれません?」
「………。」
涼人は少し困った顔をする。
「うーん、折角仲間ができると思ったのに…。」
「仲間?」
「お月見仲間です。実はここまで満月を見に来る人ってわたししか居ないんですよ。」
先客は寂しそうな顔をする。涼人は答える。
「………。いいですよ、一緒に見ても。」
先客が仲良くしようと言ってきている上に、涼人には特に断る理由もないので先客と一緒に月見をすることにした。
「やったー!仲間だ仲間だ!」
「う、嬉しそうだな…。」
先客があまりにも嬉しそうなので、涼人は少し驚く。
「今までいつもずっと一人でお月見してたんですよ?お月見しながらお話もできるなんてとっても嬉しいですよ。」
この先客はどうやらただの客ではなく常連さんらしい。 涼人は滑り台の階段を三段登ったところで座る。
「しかし…俺は気紛れでここまで来たんだけどな…。」
「でもお月見しに来たんですよね?だったらそんなの関係無いじゃないですか。」
涼人のぼやきに先客は気さくに返してくる。こんな子も珍しい。
ふと、涼人は一つ気になった。
「ところで、俺が不良とかだったらどうするつもりだったんですか?ベンチでぐて〜っとしてて柄悪く見えたでしょ?」
「悪い人はわざわざお月見なんてしませんよ。だからあなたが悪い人だなんて全然考えてませんでした。」
先客はかなり大胆な性格らしい。涼人は変な人だとつくづく思った。
高一の冬満月の夜。
これが涼人と彼女の出会いだった。