九話
こうして姉にいかなる接触行動も起こすことを禁じられ、初めのころは教育係の老いた官女に日本語でしたためた手紙を姉に渡してくれるよう頼み、懇願し、怒鳴り、ついには殴りかかったところで、あっさり魔術で捕縛されたことがある。いかに見た目が非力であっても、能力はその通りではないのだ。もちろん隙をついて与えられた部屋から逃げ出そうとしたこともあったが、特定の者のみしか開けられない扉であったため、もはや完全なる軟禁である。
よって、生きるために食事をとったり眠ること以外には、おとなしく官女から有り難いお話を聞き、栄えある銅鳩国のヒトになるための教えを受け入れるくらいしか、日和にできることは残されていなかった。
王宮では召喚後にすぐさま緘口令が敷かれたが、花嫁召喚失敗では縁起が悪いということ、何より大陸一の魔術式を操る国としての面子を保つためにも、日和の存在を国外はおろか国内でさえも知られるわけにはいかなかったのだ。
そのため街はもとより王宮の庭――穢れなき純白の楽園と謳われている国の誇りであり、一年を通してオールドローズが咲き乱れているという話を聞き、一度見てみたいと頼んだが黙殺された――にさえ出してもらえない日々が続いたある時、いつものように与えられた部屋に籠って本を読んでいると、日和は自分の腕にいくつか小さな青いあざが浮かんでいることに気づいた。あざといっても打ち身でできるような淡い色ではなく、まるで刺青や油絵の具で描いたかのように不自然なほど鮮やかな青だ。




