その5
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あれから十年。私は名目上、玲子ちゃんのお世話係ということで、周囲からは嫁き遅れとこそこそ言われているのは知っているが(失礼な奴らだ)、未だにお城で働かせてもらっている。
そしてなんとあの二人、まだ結婚していなかったりする。陛下(当時はまだ王太子だった)は早々に婚姻を結び子宝にも恵まれており、そう焦る必要がないためもあって、第二王子さまはのらりくらりと周囲の期待をスルーして、玲子ちゃんが結婚可能な年頃になるのを待っている……長い間、そういう解釈がされてきた。
だが、長いこと見守り今まで玲子ちゃんを妹であるかのように猫可愛がりしてきたくせに、この頃一人の女の子として見てしまうようになったことが恥ずかしいらしく、最近はとんと御無沙汰である。
これはいかん、こういう時こそ玲子ちゃんの方からアプローチを、と思い唆そうとするが、私の教育がまずかったのか、幼いころのしっかりぶりはどこへやら、この子がまたのほほんと育ってしまっていていけない。
「今日は暑いですわねえ」と薄着のまま平気で廊下をうろうろするし、「あらきっとお部屋を間違えたのね」と届けられた兵士からの恋文をなかったことにする。その上、「何よこのすとーん体型のくせにフェアリフェアさまからの寵愛を無下にして!」と逆恨みする不届き者には、「……すとーんって何のこと?」と真剣な目で問うてくる始末。そのため横やりを入れようとする者も大半諦めており、周囲は生温かい目で王子さまとの仲を見守っている。
「ふぇりさん、最近見ませんけれど、どうしたのかしら」
「……もしかしてお体の具合が悪いのかも知れませんわねえ。
レイコさま、せっかくですから一度様子を見に行かれては?」
そうやって少し背中を押してあげると、のんびり屋のお姫さまは急に慌てだす。




