番外編・ふぇりさんの困惑
暖炉からは中で踊り遊ぶ炎の妖精種たちが楽しげにくるくると跳ねまわり、凍りつきそうな雪と氷の季節でも暖かな空気を作り出している。窓には国花である蔓薔薇らしき繊細な彫物がされており、壁一面に掛けられているタペストリーは魔術式を展開して淡く発光を繰り返し、また高そうな書物がぎっしり詰まった宝箱のような書棚がずらりと並んでいる、豪奢な部屋。とかく、先ほどまでいた大聖堂の死にそうな寒さとは大違いだ――少女はそう思う。
すると、それに気付いたかのように目の前の人物からは小さな溜め息。びくりと反応して隣にいる子の手をぎゅっと握ると、ちょっとだけ汗ばんでいて、急な召喚にも騒ぎ立てず落ち着いているこの子でも緊張することがあるのかと、場違いな状況だと分かっていながら驚きを感じた。召喚――そうだ、この子と私は先ほど召喚されたのだ。この子はなんと別世界、私はもっと近場である国境沿いの村から。
「いったいどういうことなんだろうね」
今度はこちらに聞かせるような、大きな溜め息。彼は、美しい人だ。この小さいながら立派な魔術国である銅鳩国の、誉れ高き第二王子さま。ただの村娘に過ぎない私なんか頭も悪いし教養もないから、自国とはいえ王子さまの名前なんてとても覚えきれるものじゃないのだ。




