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その六
綾子は図らずも猫と見つめあっていた目を逸らし、ちょっと意地悪なこと言っちゃったかなと思い、くるりと振り向くと、神さまだし大変な美少年の見た目をしているくせに今にも泣き出しそうな顔が見えて、ああこいつ普通のヒトで綺麗でも賢くもないあたしなんかを本気で嫁にしたいのかと、くすぐったい気持になった。うれしい。初めて実感できて、思わず笑い出さないように唇をちょっとだけ強く噛んだ。
「まあでも、猫さん可愛いし、いいんじゃないですか」
「……っだ、だよね! ぼくもそう思ってたんだ」
ほっとしたように笑う彼は、己の美しさに恋するあまり死んでしまったっていうナルキッソスくらい綺麗すぎて、神さまでも何でもない、己以外は何にも持ってない身軽で平凡な自分とはまったく釣り合わない。だけど、そんなのも今の生活と同じで、まあ悪くはないかなと一人ごちる。
「ぼくにとって君は女神だよ、ヤーコ!」
「はいはい、それはどうも」
そんな感じで、二人が無事結婚できたのかは、神すら知らない。
セトと綾子さんのお話はこれでおしまい!
あとは余談&後書きだけです。




