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十九話
「あの。たぶん知ってると思うけど、わたし他の世界の日本ってとこからこっちに呼ばれたんだけど、元の世界に戻す魔術式はないってこの国の人たちに言われていて……」
戸惑いながら日和が説明すると、ゲブは平然とした顔で「ああ」と透徹したまなざしを緩めた。
「……ねえ、もしかしてあなたのおうちに連れてってくれるということ? でも、それだと迷惑になるんじゃ」
「ならば今より契りを交わし、共に帰ろう。お前は愚かな鳩には勿体ない、俺のものだ」
そう言い天使よりも天使らしい温かな微笑を消し、召喚時に銅鳩国の王太子からあずさがされた時よりも強引に、ぐいと日和の手を掴んだ男は、己の千年を超える長き生の中で初めての求婚を告げた。
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その後、選ばれなかった異邦の女神――の存在しないとされた双子の妹――を大陸一の魔術大国より攫った、悪魔のような残虐さで高名な蛇の王族〈ブルゥ・サーペント〉の姿を見た者はないという――。
日和とゲブのお話はこれでおしまい!
ここまでお付き合いくださりありがとうございました。
あとは設定&余談が一話続きますので、よろしければどうぞ。




