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十話

今まで見たことのない群青色に言いようのない不安を感じながらも、もしかして世界による傷の出方の違いかも知れないと思い、どこでぶつけたのだろうと怖々触ってみるが、不思議と熱も痛みもない。しかし怪我をしたから治療してくれと医者を呼びつけるのは気が引けるし、自分は明らかにいない方がいい存在なのだからこれ幸いと何をされるか分からないと思い、どうするべきか考えあぐねていたら、日毎にあざの数は増え、比例するように咳がひどくなっていった。

日和が我慢の限界を超えてとうとう呼吸困難を起こして意識を失い、再び目覚めた時、そこはもう地下牢だった。


「女神さまに感染るといけないからね」


日和に対してヒトというよりまるで無機物を見るような視線を向けた、年嵩の医者らしき男は、そう言うなり、鉄格子ごしに牢の中へ申し訳程度の薬のようなものやパンを置くと、すぐに階段を駆け上がり地下牢から出て行ってしまった。質問することを許さないような、無駄のない素早さに、わたしこれでも王妃候補の妹なのにと、日和は内心ひとりごちた。


「どうして、わたしだけ……」


ちいさく呟いて、また咳をし、意識なく鉄格子のすぐ側に置かれた妙な色のどろりとしたその薬を手に取り、ぐいと一息に喉へ流し込んだ途端襲ってくる苦さに泣いた。見捨てられた……その感覚は、以前の世界ではあたたかなまどろみの中で庇護され生きてきた日和にとって、言葉にしきれぬほどの絶望だ。

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